01_理事長ブログ

2020.08.06

対談ブログ~認知症と在宅医療 医師 坂戸 × 理事長 伊谷野~

こんにちは、事務局長の清水です。
本日は当法人の在宅認知症センター長の坂戸先生、理事長の伊谷野先生と対談形式で進めさせていただきます。

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認知症。これからも続く地域課題

ーーーー坂戸先生、まずは簡単に今までどんなキャリアを歩まれていたのか教えてください

坂戸:
私は生まれも育ちも新潟市です。新潟大学卒業後精神科入局し、精神科全般、認知行動療法、思春期発達精神医学の領域で研鑽を積んできました。

児童相談所や県福祉課で女性相談所に在籍し、知的障害と身体障害の両方の相談携わる役割として県の福祉全般を担う業務に携わったこともあります。

それから柏崎市にある新潟病院で神経内科医とともに認知症患者診察を行っていました。リハビリテーションも盛んに行われていた病院です。

伊谷野:
在宅診療で認知症高齢者の数が多く、地域としても大きな課題のひとつです。

坂戸:
実際、新潟病院時代でも、認知症の方が非常に多くいらっしゃいましたね。

伊谷野:
物忘れだけじゃなく周辺症状もあり、そのご家族がすごく疲弊している。今回、在宅認知症センターを設立するに至った経緯はそこにあります。

認知症に関連して大きな問題を抱えている人が多い、その課題解決していくことがファミリークリニックの使命であると考えています。

認知症患者さんご本人を診療の中心と考える

ーーーー坂戸先生は認知症の方を見る上で普段から気をつけてる事はありますか?

坂戸:
はい。
なにより患者さんご本人を診療の中心と考えています。

そこから患者さんやご家族との距離感を考えていますね。距離感を見ながらその関係性を構築します。ご本人からお話を伺うこともありますし、ご苦労なさっているご家族の話を伺うほうを優先することもあります。患者さんごとのケースに合わせて対応をしています。

伊谷野:
坂戸先生はあくまでも患者さんを第一に考えて診療するように心がけているのですね。

私の話をさせていただくとやはり前提は患者さんが第一と考えています。ただ認知症に関してはちょっと例外とせざるをえない場合も結構あります。その患者さん本人ではなく実はご家族のケアがメインであったりする事も多いですよね。また場合によっては担当するケアマネジャーさんが課題をよく認識していてご相談を受ける事も多くあります。

認知症はその周辺症状等をゼロにする事は出来ず、その症状緩和が中心となります。その緩和の対象は本人よりむしろご家族であったり周りの人たちです。その周辺の人々が感じている困りごとを一つ一つ緩和していくのが認知症治療の基本的な考えになると考えています。

坂戸:
ご家族や周りの方々を一緒に診ていくのはおっしゃるようにとても大切なことと思います。ただその場合でも、ご本人の持つ価値観を重視しながら、考え方だったり人生観は大事にはしたいですね。

患者さんのことを知らないと対応することはできません。患者さんご本人を知らないことには、本当の意味でのご家族の困りごとも解消できないことが多いです。患者さんをリスペクトしながら、患者さんの好きなことや大切なことを知り、ご家族の真のお困りごとに向き合っていければと思っています。

伊谷野:
敬意をもって診療を行う。私も開業時から考えていて、ファミクリとしても大切にしている行動規範のひとつです。先生がこれまでご経験なさった患者さんの中で、印象深い患者さんのエピソードはありますか?

坂戸:
ある大学教授だった男性の認知症患者さんですね。

奥様がうつ状態だっていうことで奥様にもカウンセリングを行っていました。認知症の進行に伴い中核症状である記憶障害が進行するのですが、ご家族はなかなか受け入れられず感情的になってしまう。

普段はすごくダンディな方で非常に身なりもきちんとしていてお洒落なご主人でした。
奥様としてはデイサービスに行ってほしいんだけれどもご主人は「そんなに俺が邪魔なのか!」と怒ってしまい拒否していた。

伊谷野:
男性にそのタイプの方多いですね。「お歌うたってお絵描きするなんて子ども扱いするな~!」っておっしゃっている男性の患者さん多いです。特に元医師だったりとか(笑)。

社会的地位の高かった男性だとプライドもあるので、何よりも「尊厳」を大事にするのかと思われますね。

坂戸:
そうなんです。人それぞれ価値観が違うんです。

怒りっぽくて攻撃的になっている患者さんによくよく話を聞くとボケ老人扱いされた、とおっしゃっている方がいらっしゃいます。「おじいちゃん認知症だからね」って言われ、片付けられてしまっていることが怒りの原因だったんです。

対応する人間がよく話を聞かずに「また何か言ってるよ」とか「また何か始まっちゃったよ」などと言って「どうせボケてるからね」という先入観でよく話を聞いてくれないということが症状を悪化させていることがよくあります。

伊谷野:
やっぱり坂戸先生のおっしゃる通り、その人の人生観とか職歴や生活歴を基にしてその方にとって何が大事なのかということを見極めていく事がとても大事ということですね。

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対談ブログは以上になります。

認知症に関するご相談は当法人の在宅認知症センターにご相談ください。
よろしくお願いいたします。

医療法人社団 双愛会
事務局長 清水 雄司
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2020.06.16

対談ブログ~ファミリークリニックのコンセプト『在宅の総合病院』とは何か? 医師 高橋 × 理事長 伊谷野~

こんにちは、事務局長の清水です。

2020年7月1日時点で当院の常勤医師数は、11名になります。
本日は常勤医師数が10名を超えて組織が大きくなってきたこのタイミングで、改めて当院の方針を掘り下げていく機会にしたいと思います。

今回、当法人ファミリークリニック( 蒲田 品川 多摩川 )が掲げている『在宅の総合病院を目指します』というコンセプトについて、理事長の伊谷野先生、在宅リハビリテーションセンター長で医局長でもある高橋先生と対談形式で進めさせていただきます。

患者さんはどんな状態であれば”安心”を感じることができるのか?

ーーーーまずは当法人の目指す『在宅の総合病院』とはどのような状態を指しますか?また合わせて、在宅の総合病院ではない状態だったとしたら何を指しますか?

伊谷野:
たしかに自分たちの考えを言葉にしていくことは大事ですね!
それではまず私から。

大枠として『患者さんの視点』と『医療従事者の視点』のそれぞれの視点から在宅の総合病院を考えるという流れで進めていきます。

まずは『患者さん視点』の在宅の総合病院から考えます。

患者さんはどんな状態であれば”安心”を感じることができるのかーーー私は”患者さんご自身が困ったことをトータルで診てくれている”と感じた時に”安心”に結びついているのではないかと思います。

そうなると、例えば医師や医療機関が「認知症は専門ではないので対応できません。緩和ケアは対応しません。専門外は対応しません。」という状態であれば、掲げている在宅の総合病院というコンセプトとは外れます。

患者さんは「困っている今の状態を何とかしてほしい」ということがご要望になりますので、どんな疾患であっても対応ができる組織、それが在宅の総合病院ではないでしょうか。

高橋:
伊谷野先生のお話は僕も共感しています。
地域医療においても在宅医療においても総合診療は『お薬箱』のようなものだと思っているんです。

『在宅医療はお薬箱』?主治医の役割とは?

ーーーー『在宅医療はお薬箱』?面白いフレーズですね。少し補足をお願いいたします。

高橋:
僕はへき地医療や地域医療をベースにしている大学の出身です。そこからの経験でかかりつけの主治医はお薬箱のようなものだという考えに至りました。

患者さんはいくつかの症状を抱えていることがあります。例えば、お腹が痛い、胸が痛い、目が痛い、皮膚に腫れ物があるといった状況だとします。

この場合、内科、眼科、皮膚科の3つの診療科を受診をすることが一般的ですよね。医療機関側で考えると1人の患者さんに3人の医師がつくことになります。

病院では、各診療科で検査をして、診断をして、処方や処置をします。ただ、在宅医療の領域で言えば、その人の今の状況に合わせて、必要な対応を最低限でも良いからその時、その場ですることもとても大事だと思います。

お薬箱という役割のかかりつけ主治医であれば「今の状態からとりあえず何とか見通しを立たせることができる」という状況を目指したいです。

患者さんの「目が痛い」という投げかけには、診療科に関係なく、最低限やることは目を診て、わからなければ写真を撮って、情報収集をした上で地域の眼科の先生にお願いするという流れでお応えしたいと思っています。

伊谷野:
そうですね。眼科の検査はできないですけど、点眼薬を処方することはできますからね。「専門外でわかりません、知りません」ではなく、まずは患者さんの困っていることに向きあう姿勢が大切ですよね。

高橋:
はい、そうですね。

僕がこういうときの対応は「仲の良い親戚のおっちゃん、おばちゃんからの相談だったらどうするか?」と考えるようにしています。”仲の良い友達”と置き換えても良いです。

専門外のことももちろんありますが、仲の良い親戚のおっちゃん、おばちゃんが病気や症状について相談してきたときに「知りません!」とバッサリと断る対応はしないです。

まずは聴いて、見て、できることは対応するし、できないことは適切な役割へのアクセス方法を助言します。

仲の良い親戚のおっちゃんやおばちゃんからの相談への対応と同じように在宅医療の患者さんに接することを考えていますね。

専門に関わらず「あの先生に聞けば、ファミクリに聞けば、何かしてくれるかもしれない」という”安心”を提供する

ーーーーなるほど!ありがとうございます。
それではもうひとつ話が出ていた『医療従事者視点』の在宅の総合病院の話に移りましょう。

伊谷野:
高橋先生の話を聞きながら、私なりの考えをまとめていました。

改めて言えることは、従来の総合病院の考えを何でもかんでも在宅医療に反映するわけではないということですね。

総合病院は各診療科や専門領域がハッキリしています。それは高度な医療を提供する上では必要なことです。

一方で、あえてデメリットを考えるとすると診療科が縦割り過ぎてしまい、それが際立ってしまうと診療科同士の横のつながりが希薄になってしまうことがあるかもしれません。そうなると1人の患者さんに何人もの医師が対応することになるわけです。

当法人の掲げる『在宅の総合病院』は、専門を追求すること自体は良いことですが、その専門を突き抜け、その専門しかやらない、専門外のことはすぐ他に回すという意味ではありません。

ご自宅で療養生活を送りたいという患者さんは、最高の設備が整っている病院での最高の医療を求めているというわけではなく、苦しい状況を良くしてほしいと求めています。

「病気や健康上の問題に対して一か所で全て対応してくれて解決できる」ことが”安心”につながると思っているので、それに応える医師は『1人で総合病院の状態を作るという姿勢』が大事です。要はまずは何でも診る、患者さんに向き合い、自分でできることを考えるということです。

ーーーー1人で総合病院の状態を作るって、、結構難易度が高いように感じてしまったのですが、可能なのでしょうか?

伊谷野:
1人で総合病院の状態を作るという『姿勢』ですね。実際、1人医師で365日24時間なんでも対応するということだとすぐに限界がきます。

私は2005年の開業時にその状態でしたが、体の負担が半端ではないです。長くは続かないですね。長くは続かないということは、結局のところ地域に迷惑をかけてしまうことにもつながりかねません。そこに気づけた時に、私はチームで対応する方針に切り替えていきました。

高橋:
そうですね。
地方やへき地で言えると思うのですが「あの先生に聞けば、何かしてくれるかもしれない」という地域の総合病院や診療所はあると思います。それは地域の患者さんにとっては安心感がありますよね。

ただ、一方では1人医師の限界というのはありますね。それは良くも悪くも、人数が少ない状態で提供している医療は、その先生の医療水準が地域の医療水準になるという側面があるということです。

もちろん高い医療水準であれば良いのですが、それを持続させるのは非常に難しいことだと思います。

当院は複数の医師がいて診療科も多岐にわたるので、ある意味セカンドオピニオン的な役割も担えていますよね。その点は1人医師では難しく、複数名体制ならではのメリットがあることだと言えます。

伊谷野:
複数名体制になったときに気をつけなければいけないのは、診療体制の縦割り化です。当院では診療体制の縦割り化はなくしていかなければいけない。

高橋先生の「どんな状況においてもこのお薬箱(主治医対応)があればなんとか見通しを立たせることができる」という表現がしっくりきますよね。複数診療科の広い守備範囲が必要になってきます。

高橋:
医師も人間で、人間には当然能力の限界があります。まだ経験できていないこともたくさんあるわけなので、わからないときは情報収集に徹して、他の先生の視点も入れることで解消できることがあります。

その時に次回訪問する別の医師が患者さんに対して「先日、主治医の先生から聞きましたけど、、」と話を続けていくことでスムーズに連携ができてくると思います。

目指すのは『在宅の”層”合病院』?ファミクリはミルフィーユ?

ーーーーありがとうございます。高橋先生、在宅医療はお薬箱というようなフレーズもぜひ考えてください。笑

高橋:
うーん。
僕のイメージだと『在宅の”層”合病院』でしょうか。

医師はスペシャリストの専門職で、キャリア形成上、専門領域追求型の I 型人材と表現されることがあります。私は在宅医療で求められるキャリア形成は、ひとつの専門分野も精通した上で、幅広い領域も浅く広く対応できる T 型人材ではないかと思います。広い知識と視野を持ちながら、自分の得意領域も追求している先生は活躍していますね。

I 型人材の先生が増えていくと、縦には伸びますが、横を見ると所々に穴が出てきてしまいます。得意不得意が目立つ組織になっていくでしょう。一方で T 型人材の先生方が増えていくと、広い領域をカバーしながら何層にも積み上がっていきますので、穴がなくなり、かつ縦にも伸びていくわけです。

断らない在宅医療を掲げている当院としては、このような層の厚みがある”層”合病院の状態がイメージに近いのではないでしょうか?
僕は甘いものが好きなのですが、お菓子で例えるなら、何層にも重ねたミルフィーユでしょうか。笑

伊谷野:
在宅の”層”合病院、ファミクリはミルフィーユ、いいですね~!
地層が重なるように層に厚みができれば隙間もなくなりますからね。

「緩和は得意でも、認知症は診れない」「内科は診れても、婦人科は診れない」「腰痛は診れても、腹痛は診れない」など、1人ではどうしても得意不得意がでてきます。

そこをカバーできるのが在宅の総合病院の目指すところですね。現政策において医師のキャリア形成上、不得意なことやできないことはあるので、それ自体は当然です。

そこから思考停止に陥らず、まずは向き合い、どうすれば良いかを考え、できないことは適宜他の先生に相談し連携ですね。

医師個人にとっても視野や対応の幅が広がる良い機会だと思いますので、必ずプラスになるでしょう。

実際、他の先生のカルテやカンファレンスを通じて、学べることは多いですね。
私自身も内科外科系のアプローチと精神科のアプローチの違いがわかったときは勉強になりました。

高橋:
その通りですね。医師が他の人に聞くことは全然恥ずかしくないと思います。

私は一緒に同行している診療助手(メディカルアシスタント)から助言を得ることもあります。診療助手は患者さん側の視点で見てくれているサポーターとしての役割もあり、とても助かっていますね。

ーーーー当院の診療助手についてですね。他の職種のこともぜひ掘り下げていきたいですね。本日はお時間になってしまったので、次回以降のテーマとしてまた開催させてください。次回以降のテーマも決まったところで、最後に伊谷野先生締めの言葉を!

伊谷野:
そうですね。
当院は患者さんの視点で「病気・健康上の問題に対して一か所で全て対応してくれて解決できる」個人が集まって構成された『在宅の総合病院』を目指しています。ただ、まだまだ模索中です。

時間や医療資源は限りのあるものなので、すべてを完璧にできるわけでもありません。それでも患者さんの困っていることに向き合い、それに対して時間や医療資源が限られた中で、個人個人がその時のベストを尽くすという姿勢は大事にしていきたいと思います。

患者さんや地域の関係者からのフィードバックを改善に活かしていきながら、より良い組織を目指していきます。

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対談ブログは以上になります。

医療従事者の方や地域関係者の方の訪問診療の見学も行っておりますので、訪問診療にご興味のある方はご連絡ください。

医療法人社団 双愛会
事務局長 清水 雄司
y.shimizu@twinheartmedical.com

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2020.05.31

【理事長インタビュー】在宅医療クリニックのIT活用について

  • こんにちは、事務局長の清水です。
    本日は在宅医療クリニックのIT活用について、理事長の伊谷野にインタビューしました。

清水:
当院ではIT活用が加速してきていると思います。電子カルテのクラウド化はもちろんのこと、電子カルテではできない機能についてはGoogle社のG SuiteやCybozu社のkintone、その他でも様々なITサービスで補完していますね。

改めて伊谷野先生は在宅医療クリニックのIT活用については、どんなことを考えて導入しているでしょうか?

伊谷野:
言うまでもないですが、在宅医療サービス(訪問診療、訪問看護、訪問リハビリテーション、訪問栄養指導など)をご提供する上で、もはやクラウド化は欠かせないですね。訪問診療の場合、クリニックから5kmくらいまで離れた場所で診療を行いますからね。

どんなことを考えてIT導入をしているかという点については、一言で『法人理念・行動規範』に合っているか合っていないのかということを考えていると思います。

清水:
法人理念は『医療を通じて「安心して生活できる社会」を創造する』ですね。行動規範は『向上心・柔軟性・誠意・敬意・チームワーク・効率性』になります。確かに効率性というキーワードは親和性高いように感じます。

伊谷野:
法人理念や行動規範のことを掘り下げると今回のテーマの時間がすべて終わってしまうので今回は割愛しますね(笑)。法人理念や行動規範と照らし合わせながら『患者様・ご家族と直接コミュニケーションをすべき時間』と『それ以外の時間』に分けて考えていたように思います。

医師が最も『安心』をご提供できる時間は何か?ーーーそのことを追求すると、それは患者様やご家族と対話できている時間です。この瞬間はとても大切で、簡単に効率化ができるものでもありません。

しかし、それ以外の時間ーーー例えば、同じ内容を別々の紙に記載しなければいけない時間や欲しい情報を探す時間などはムダな時間になりますね。そのような領域はトコトン追求して削減し、医師やそれぞれの職員が本来やるべき大切な時間に力を注げる体制を意識しています。

清水:
本来やるべき仕事に集中する。言葉では理解しているつもりですが、気づけばやらなくても良かったことに時間を費やしてしまうことは結構心当たりありますね。

伊谷野:
私もありますけどね。笑
だからこそ、日々のルーティン業務を当たり前のことにしないように気をつけるようにしています。定期的に業務を振り返る時間は必要ですよね。ここって省けないかな?とかここは別の方法でできないかな?とか。そのような時に、進歩が著しいIT技術がピタッと当てはまる時があります。

清水:
なるほど。
ここ最近の環境を振り返るだけでも紙をプリントアウトすることがかなり少なくなったと感じています。
ITサービスは年々増えていますが、IT導入で失敗したことはありますか?

伊谷野:
それは恥ずかしながら失敗だらけですねー。
やっぱりシステムは使ってみないとわからないので、そもそもやりたかったことができなくて意味ないじゃん(汗)ってこともありました。

清水:
費用かけて活用できない状態だと苦しいですね。

伊谷野:
そうですね。
なので、IT導入時に気をつけていることのひとつには、『最低限これだけは成し遂げたい』という項目に絞って考えています。こんな機能もつけたい!あんな機能がほしい!と盛り込み過ぎると目的がブレてしまうことがあるからです。

加えて使った後にある程度の『修正ができるか?』という点はとても大事です。多大なコストをかけて完璧で素晴らしいシステム作りを目指すよりも、『小さく早く始めることができて、後で修正もできる』というシステムを選んだほうが業務に合わせやすいなと思います。最近は現場で修正ができるシステムが増えてきたと感じるので良い時代になってきましたよね。

清水:
医療業界は2年に1度の診療報酬改定もあるので、強制的に業務内容を変えなくてはいけないこともありますからね。最近使ってて良かったシステムはありますか?

伊谷野:
先日開催したWEBオンラインの勉強会は良かったですね。会議システムのZoomを今回は活用しましたが、WEBならではの良さを体感できました。今後も積極的に活用していきたいですね。

また、勉強会だけではなく病院間での退院前カンファレンスなどにも活用できると思います。在宅医療において多職種連携は必須ですが、場所時間を合わせることに結構苦労します。WEBでつないで対応できれば、開催のハードルも下げられますし、感染症のリスクも防げますね。

清水:
WEB勉強会は初回にも関わらず70名以上の方に参加いただきました。ありがたいですね。
当院では院内カンファレンスはすでにWEB活用が定着しています。外部との情報連携にも活用していけると良いですね。
それではそろそろお時間になるので本日はここで終わります。

伊谷野:
ありがとうございました。
あくまでも関わる方に『安心』をご提供するためが第一にあって、その手段がIT技術ということですね。話しながら良い振り返りができました。その前提を抑えつつ、これからも良い方法があれば積極的に取り入れていきたいと思います。

医療従事者の中にもIT化していきたいという方は多いと思うので、うまく活用して便利な地域社会にしていければと思います。

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2020.04.21

対談ブログ~新型コロナウイルス感染症と廃用症候群(生活不活発病) 医師 高橋 × 理事長 伊谷野~

こんにちは、事務局長の清水です。

政府による新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言は7都府県を対象ーーーーその後、2020年4月16日に新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の対象地域を全国に拡大しました。実施期間は2020年5月6日までとしています。
このような文字通りの緊急事態の中、先が見えないという環境下においても、我々のような在宅医療クリニックにやるべきことやできることはあるのでしょうか?

今回は高橋先生、伊谷野先生と対談形式で進めさせていただきます。

高橋先生のキャリアを一言でご紹介すると、保健所勤務経験があり、総合診療もしているリハビリテーション専門医ですね。

高橋先生、今回は様々な視点からお話いただけると嬉しいです。

運動していないことへの不安を解消したい

高橋:
ご紹介ありがとうございます。笑
これまでの経歴をこうやって見ると新型コロナウイルス感染症にも十分配慮した感染対策を行いながら、全身状態を確認して、専門的なリハビリテーションを提供しようと思っています。

そして結論から言いますと、患者さんやご家族、ケアマネジャーさんに向けてお伝えしたいことがあります。

外出自粛1ヶ月あたりから、訪問リハビリテーションなどを通じて少しでも運動することが必要です。

ここに1日の座位行動(座っているもしくは横になっていること)の時間が長いと死亡率がアップするという研究結果があります((文献) van der Ploeg HP, Chey T, Korda RJ, Banks E,Bauman A. Sitting time and all-cause mortality riskin 222 497 Australian adults. Arch Intern Med. 2012Mar 26;172(6):494-500.)

1日平均11時間以上座っている(もしくは横になっている)人は、4時間未満の人と比べて1.4倍命を落とす確率が上がるということです。また、1日の座位行動が8時間を超えてくると急にリスクが上がっていきます。

ただこれは45歳以上のオーストラリア人の研究データになり、働いていたり通常の生活をしたりしている人も含まれています。

ーーーー要支援、要介護のご高齢者に至ってはさらに注意する必要があるということでしょうか。

高橋:
そうなりますね。

これまで外出やデイサービス、デイケアなどで運動をしていた方が、現在ご自宅で待機の状態になっている場合、これからは廃用症候群(生活不活発病)を気にしなければいけない時期になります。一方で、新型コロナウイルス感染症の影響により不安な状態が続いているかと思います。

ケアマネジャーさんとしても、最初の1ヶ月は、利用者さんのお薬の調整や健康管理を第一に考えられたと思います。2ヶ月目に入り廃用症候群(生活不活発病)の症状ができてきた場合、「今すぐ廃用症候群(生活不活発病)のサポートが必要な状態なのか?」それとも「とりあえずはこのまま経過観察の状態で良いのか?」という判断がつきにくい状況でお困りになっていくのではないかと想像します。

今回の状況はケアマネジャーさんにとっても初めてのことになります。どこに相談して良いかもわかりません。筋力や体力が落ちることがわかっている中、様々な医学的側面を総合的に考えてプランを立てていく必要があることにお悩みになられるのではないかと思います。

そのようなときに、リハビリテーション専門医に相談していただけるとお役に立てることが多いと思います。

伊谷野:
たしかに緊急事態宣言後の今はとにかく感染防御を徹底する状況。つまり政府が呼びかけている三密(密閉・密集・密接)を避け、いわゆる新型コロナウイルスの集団感染(クラスター)発生を防止することが最も大事な時期だと言えます。

そこから今後もっと気にしなければならないことは『自宅待機状態が続いてしまうこと → 筋力が低下してしまうこと → 廃用症候群(生活不活発病)が進行してしまうこと → 寝たきり状態の人口が増加してしまうこと』という悪循環ですね。

まだ廃用症候群(生活不活発病)にまで気が回らないところではあるんですけど、今の状況が長期化していくことも考えていかなければいけませんね。

今はどうしてもずっと家にいる状態が続いてしまうので、廃用症候群(生活不活発病)が問題になってくる可能性は十分にありえます。

自宅待機が続くことの懸念点

高橋:
普段慣れている家にいるということは、実は最初は変化に気づきにくいという点もポイントです。慣れている家にいるからこそ、『自分自身の筋力低下に気づきにくい』そしてそのことを『周囲に気づかれない』ということが問題になりそうだと思っています。

もう少し具体的に説明すると、災害時に避難所でじっとして1週間もすると「筋力が低下してきている」と感じてしまうご家族は多いと思いますが、デイサービス、デイケアなどで行われている訓練や生活の状況を頻回に見ているご家族はそれほど多いわけではないので、自宅内でなんとなく生活ができてしまっていると、「普段とあまり変わらないし、、、歳のせいで少しよろけているんじゃないのかな???」とご家族が感じているうちに廃用症候群(生活不活発病)が進んでいくみたいになることを懸念しています。これから自宅待機の状況が続くと目立ってくる事例になるのではないでしょうか。

東日本大震災、熊本震災のときなどで、水分摂取が不十分で足を動かさないとエコノミークラス症候群になってしまうことは有名ですね。地震などの災害に対して、日本大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会のマニュアル(13ページ、14ページ)でも発生2ヶ月目から廃用症候群(生活不活発病)に対するリハビリテーションを巡回診療を用いて実施するように提案されています。

不活動によって内科的な影響も出てくると思うのですが

伊谷野:
そうですね。

循環器系で言えば、肺活量、心肺機能が落ちてくるということはあると思います。それも急に落ちてきてしまうこともあると思うんですね。そして肺活量が落ちると肺炎のリスクが出てくるということも十分に考えられます。

また足のむくみが増えるということもあるかもしれません。これは自宅から施設入所した方によく見られる現象ですが、入所後多くの方で足のむくみが出現します。これは自宅でそれなりに動いて生活している環境から施設に入所したとたん動くことが少なくなってしまったために生じる現象です。これと同様に新型コロナウイルスによる自宅待機の期間が長くなると足のむくみが出やすくなることが危惧されます。

あとは、ずっと座っていたり、横になっていたりすると認知機能が低下して認知症が加速する可能性もあります。

病気があると安静を第一に考えてしまい、不活動の状態になり易いです。そして、廃用症候群(生活不活発病)を知らずに進行を早めてしまうのではなく、早期発見と早期対応をすることが望ましいです。
一方で知識がない自己流のままで外出したり、過度な運動をしたりしてしまうと、転倒してしまうリスクもありますね。

そのあたりを高橋先生やセラピストといった専門職からフォローできると良いですね。

在宅医療 これからのリハビリテーション

ーーーー具体的にはどのようにしていくと良いのでしょうか?

高橋:
これまで外出できるくらいに動けていた人が、テレビでしているような手足を伸ばすような運動のみにしていると運動量が足りないということも十分にありえます。本当は人それぞれの個別性が高いので、それぞれにこうしたほうが良いとアドバイスできることが理想です。目標も人それぞれですからね。

さきほど伊谷野先生が挙げた認知機能の話をしていましたが、認知機能には歩くときに景色をみたり、会話をしたりしながら体を動かすことが良いと言われています。物を覚える時に歩きながらするとよく覚えられると行った具合にですね。

僕の経験では、20年前くらいは集まって体操のような運動することが生活期のリハビリテーションの主流でしたが、現在はパーソナルトレーナー、つまり『私のためだけに助言してくれる』といった個別指導の生活期リハビリテーションに人気があります。

その意味では今回の自宅待機の状態は、今までデイサービス、デイケアなどで何となくできていたことが、自宅の生活動作のなかでもできるということが可能だと感じていただく良い機会ではないでしょうか。

伊谷野:
やはり家の環境はそれぞれに違いますからね。本当の生活環境を有意義にしていただくという意味では、個別対応はとても良いことですね。

密集状態を避けることを考えると、今までの機能を各ご家庭に分散させる必要があるーーーーこれは企業で言うと、テレワークの考え方を導入する状況と似たような転換期になってくるかもしれませんね。

新型コロナウイル感染症で脅威にさらされている日々の運動能力や健康をファミリークリニックと一緒に守りませんか?

ーーーー訪問リハビリテーションを理解する上で、知っておいたほうが良いことはありますか?

高橋:
これはよくある誤解ですが、訪問リハビリテーションは『自宅内のみ』で行うリハビリテーションだけではありません。

 密閉空間が気になるなら屋外の人が少ないところで散歩も兼ねて訓練を行うことも可能なのです。これは健康維持の散歩は不要不急の外出には当たらないという国の指針もあります。もちろんその逆で、外が心配だから家で運動したいというご要望があればそれも可能です。

また、当クリニックの訪問リハビリテーションの場合、保健所勤務経験のあるリハビリテーション専門医がバックアップすることで新型コロナウイルス感染症にも十分配慮した感染対策を実施して専門的なリハビリテーションを受けられるのも特徴ではないかと思います。

伊谷野:
とても良い取組みですね。実際、在宅医療でリハビリテーションを専門にしている医師自体が少ないですからね。求められていることだと思います。引き続き連携先の居宅介護支援事業所や訪問看護ステーション、病院とも良い連携をとってほしいです。

まとめると、緊急事態宣言から1ヶ月、2ヶ月が経過し、廃用症候群(生活不活発病)を気にしなければいけない時期かつ新型コロナウイルス感染症への不安が続いている時期になってきた場合を想定し、患者さんの体力低下→合併症→増悪させてしまう、というリスクを考えなければいけないということで、予防の観点でも対応が必要ですね。ファミクリの利用を短期的、一時的な利用でも構わないものとして、落ち着いたら元の生活に戻れるような準備やご支援をしていきたいですね。

その役割を高橋先生や在宅リハビリテーションセンターの職員、近隣事業所との連携で担っていただけると地域社会への不安解消、安心の提供につながります。

高橋:
はい、本当にその通りですね。

「リハをするかどうかわからない」という状態のままで構いませんので、お気軽にご相談いただきたいと思っています。

外来診療やデイサービスがいつものように行ける生活に戻ったら、いつもの生活スタイルに戻っていただくーーーーそれも在宅リハビリテーションセンターの大きな役割になります。

これまで外来通院を我慢してきた方、運動不足と思っている方の健康とリハビリテーションを支えていければ幸いです。

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対談ブログは以上です。

ご不明点やご質問はお気軽にご連絡ください。
医療法人社団 双愛会
事務局長 清水 雄司
y.shimizu@twinheartmedical.com
電話番号:03-5480-1810

2020.03.31

【理事長インタビュー】〈もしバナゲーム〉を利用したACP研修会の開催

こんにちは、事務局長の清水です。
本日はACP(Advance Care Planning)についてお話を伺っていきたいと思います。

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伊谷野:

本日のテーマはACPについてですね。

ーーーーはい。まずはACPとは何かという点から教えてください。

伊谷野:
ACP(Advance Care Planning)とは、
将来の変化に備え、
将来の医療及びケアについて、
患者さんを主体に、
そのご家族や近しい人、医療・ケアチームが、
繰り返し話し合いを行い、
患者さんの意思決定を支援するプロセスのことを言います。

厚生労働省が「人生会議」と名称付け、2019年11月に啓発用ポスターを作製したことで話題になったことも記憶に新しいのではないでしょうか。

誰でも、いつでも、命に関わる大きな病気や怪我をする可能性があります。

そのため、自分自身で前もって考え、周囲の人たちと話し合い、本人が望む医療やケアのことを共有することが重要です。
そして、心身の状態に応じて意思は変化することがあるため、何度でも繰り返し考え、その話し合いを重ねる過程を大切にしていきましょうという取組みになります。

ーーーーなるほど、概念を理解しました。その活動のひとつとして〈もしバナゲーム〉があるということでしょうか。

伊谷野:
そうですね。
当院のACPの普及活動のひとつとして、〈もしバナゲーム〉の勉強会への参加があります。

他の医療機関が開催した会に参加させていただいたこともありましたし、当院主催で地域の医療介護事業所向けに〈もしバナゲーム〉を用いたACP勉強会の開催もしました。
そのときの参加者の職種は、看護師とケアマネジャーが多かったですね。

参加者からは「〈もしバナゲーム〉を利用する事で自らを振り返る良いきっかけになった。」「是非担当の患者さんや家族とこの〈もしバナゲーム〉を使いたい。」という嬉しい声をいただきました。

ーーーー今後の活動で考えていることを教えてください。

伊谷野:
地道ですが、まずは地域の医療・介護職を中心にACPを身近に感じ、少しでも知ってもらう事が目的ですね。
〈もしバナゲーム〉がきっかけになればと少数や複数グループの実施など、大小で勉強会を開催していきたいと思います。

地域の居宅介護事業所や訪問看護ステーションなどからも各事業所のスタッフの間でゲームを行いたいとご希望がありましたので順次開催していきたいです。
医療職・介護職スタッフの間で〈もしバナゲーム〉を利用したACPが浸透することで、いずれそのスタッフと関わりのある地域の住民の方々に広く浸透することを期待しています。

医療・介護の現場においてACPはまだあまり実施されていないと言われています。
時間的制約がありつつも、どのように実践していくかという取組みは意義があると思っています。

また当院の在宅緩和ケアセンター長である田代医師より「がん終末期の患者さんに対してACPを実施することはなかなか難しい。他の医療機関の事例も極端に少ない」という意見もありました。
在宅緩和ケアを受ける段階は、時期として遅すぎるのではないかという意見もあり、たしかにACPを行うタイミングを見極めることに課題があると思います。

ACPは大切な取組みであることに間違いはありませんので、早いタイミングで実施していくことも重要です。
そのきっかけとして〈もしバナゲーム〉はゲーム感覚で気軽に実施でき、地域社会にACPを普及させるツールとして非常に有用な手段です。

これからも終末期医療を行う上でACP(Advance Care Planning)により事前に本人の意思表示することがますます重要になってくるといえます。
患者さんの人生観や価値観、希望に沿った、将来の医療及びケアを具体化することを目標に、より良い終末期医療を実践するため〈もしバナゲーム〉を活用してACPの普及を試みていきたいと思います。

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本日のインタビューは以上です。

▼在宅緩和ケアセンターへのお問い合わせはこちら
医療法人社団 双愛会
事務局長 清水 雄司
y.shimizu@twinheartmedical.com

2020.02.28

対談ブログ~在宅緩和ケアセンターについて 医師 田代 × 理事長 伊谷野~

こんにちは、事務局長の清水です。
本日は対談形式で当法人の『在宅緩和ケアセンター』についてご紹介いたします。
よろしくお願いいたします。

▼対談内容はこちら
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病院と在宅医療の違い~せん妄について~

清水:
本日は『在宅緩和ケアセンター』のことを中心にお話を伺えればと思います。
田代先生は病院のPCT(Paliative Care Team:緩和ケアチーム)などを経験した後、昨年より当院にて在宅医療に携わっていますが、病院と在宅医療の違いはありましたか?

田代:
そうですねー。
まずはじめに、せん妄の患者様の違いに気が付きました。

病院時代は半数以上はせん妄との戦いだったと思います。
しかし、現在の在宅医療の患者様を比較するとせん妄の方が極端に少ないです。
入院時にはせん妄に悩んでいた患者様が、ご自宅に戻ると驚くほど落ち着いているというケースも少なくありません。

この違いについては根拠をつけられていないのですが、医療面だけではなく療養環境の変化により状態が安定するという症例もあるように思います。

伊谷野:
確かにそれはありますね。
病院でせん妄の激しかった患者さんでも退院して自宅に戻ってくると、これまでの状況が嘘だったかのようにせん妄が良くなる事が多いんです。
これまでのせん妄軽快のケースのデータをまとめて在宅緩和ケアチームで振り返り、他の事業所と事例共有することで地域の成長にもつながるかもしれませんね。
今後の取組みとしてはどのような動きが良いでしょうかね?

田代:
退院時から時系列に患者様の状態を評価していくことが良いと思います。
そのデータが集まってくれば、せん妄が強くなる前に対応ができてくるかもしれません。

人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング )について

清水:
病院の医療従事者にもお伝えしていきながら、スムーズな連携が作れていくと良いと思いました。
その他、在宅医療に携わって気づきはありましたか?

田代:
2つ目は人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング )について考える機会が増えてきました。
ACPについて、概念自体は広まってきているものの、具体的な事例はまだまだ少ない状況だと感じます。
医療介護従事者だけではく、患者様やご家族に自分自身で前もって考え、共有することのきっかけ作りをしていくことが重要だと思います。
そこで当院はパンフレットでのご案内や亀田総合病院の先生方が監修された『もしバナゲーム』といったカードゲームを活用して、色々な方法を試しているところです。

伊谷野:
いいですね!
将来的にACPの具体的な取組みが他の地域にも広まっていくような機会も作っていきたいですね。

独居の患者様と在宅医療について

田代:
最後は独居の患者様についてですね。
結論から言うと『独居ということだけを理由に在宅に帰れないことはない』と感じています。
「自宅に戻りたい。自宅で過ごしたい」というご意向があれば、独居の方でもご自宅に帰ることが可能だとわかりました。

今振り返ると私の病院時代では、独居 ≒ 在宅には帰れないという考えが私を含めて病院の医療従事者に多かったように思います。
しかし、実際に在宅医療に携わっている上で、独居の患者様は全く珍しくありません。
在宅サービスが増えてきているので、他事業所や多職種との関わりで適切なサポートができれば、十分にご自宅で療養生活を送っていただけています。

伊谷野:
独居は連携が必須ですよね。
情報共有と事例を重ねていきながら、地域で支えていけるようになりたいと強く思います。
在宅医療と病院の連携についてはどのように感じていますか?

田代:
在宅医療から入院移行になるケースについて、病院に送るべきときとそうではないときの判断についても認識が変わったかもしれません。
在宅医療でできることは想定より多く、最初にお話したせん妄のケースは安易に入院しないほうが良いこともあります。
その他、脱水時に皮下注射を使って在宅療養でも点滴が可能です。

一方で病院に送ったほうが良いケースというのもあります。
例えば、持続的な鎮静が必要な時は病院で適切な治療を受けたほうが良いでしょう。

これからの医療のカタチとして『ときどき入院、ほぼ在宅』 という言葉通りのことを体感できていると思います。

これからの在宅緩和ケアセンターの取組みで考えていること

清水:
ありがとうございます!
質問が前後してしまいますが、最後に伊谷野先生には在宅緩和ケアに力を入れている経緯を、田代先生には在宅に携わるきっかけをそれぞれ教えてください。

伊谷野:
2005年開業時から、『断らない在宅医療』という基本姿勢を続けています。
その姿勢を続けていると、近隣の医療介護関係者からは対応が難しいケースをご依頼いただくことが増えてきます。
その中でも緩和ケアの領域は年々強く求められてきました。

そうなると365日24時間対応しつづける在宅医療に対して、私1人で対応できる範囲にも限界が訪れます。
その状況を変えながら1人でも多くの患者様に安心をお届けでするためには、院内院外関わらず同じ想いを持っていただける仲間が必要になります。
1人の力より、仕組みや連携でカバーしていこうという考えに至ったのです。

今回、田代先生が加わったことにより、これまでも力を入れていた緩和ケアにより一層厚みが加わったと思います。
緩和ケアの領域は、城南地区だけではなく、日本全体の課題になっていると思います。
田代先生には、ぜひ好事例を作っていただいて勉強会や学会などで発表を行い、在宅緩和ケアの底上げに貢献していただければと思います。

また、連携先の病院や訪問看護ステーションの先生や看護師さん、ケアマネジャーさんとも事例を通じてフィードバックしあえる関係性を作っていただきたいです。
成長できる連携をぜひ実践してください。

田代:
がんばります。笑
学会発表などもできると良いですね。

これから2025年、2030年に向けて、人口動態が少子高齢化になることは間違いありません。
一方で病院ではすべての緩和ケア患者様を受け入れる財源も設備もないことが社会課題になっていきます。

在宅医療に携わろうと考えたのは、これから5年10年先のことを考えたときに、私自身が病院だけではなく在宅の緩和ケアにも携わってみたいと考えたことがきっかけです。

今はファミリークリニックに入職してみて、病院と同じように在宅でも『PCT』(Paliative Care Team:緩和ケアチーム)を作ることで患者様やご家族の穏やかな療養生活を支えることができるのではないか、と考えています。—————————————————————
対談記事は以上になります。

医師や看護師など、医療従事者の方のご見学なども可能です。
▼緩和ケアや在宅医療に関するお問い合わせはこちらにご連絡ください。
医療法人社団 双愛会
事務局長 清水 雄司
y.shimizu@twinheartmedical.com

2020.01.31

【理事長インタビュー】~2020年の方向性を考える~

こんにちは、事務局長の清水です。
2020年もどうぞよろしくお願いいたします。

▼早速ですが、伊谷野先生のインタビューはこちらから
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ーーーーあっという間に、、気づけば1月末ですね。本日は2020年のお考えについて質問させてください。

伊谷野:
そうですね。
最近は実際に直面している困っていることを地域の在宅医療関係者に改めて聞いてみたり、意見交換したりしていました。
そうするとキーワードとしては『末期がん』『認知症』『フレイル』『独居』の患者様の在宅医療対応に難しさを感じていることがわかります。

当院としては、それぞれ今までも向き合ってきた領域になります。
『断らない在宅医療』『在宅医療の総合病院を目指す』という基本方針を掲げていますので、これまで求められてやってきたことをこれからも続けていく姿勢に変わりはありません。


その上で総合診療の厚みを持たせていきながら、これからは各領域に対して、より専門的に体制強化していくイメージです。これからの方向性をわかりやすくお伝えするために概念図を作成しました。


ーーーーなるほど。その概念図をそれぞれ分解して深堀りしていきたいところですが、まずは全体感を教えてください。

伊谷野:
安心を作る4つの柱ーーー。これは、総合診療科という土台に4つの柱(緩和ケア、リハビリ、精神・認知症、救急)があり、それらが『安心』を支えているイメージです。

順番にまずは当法人の大事な土台となる総合診療科
開業時から、疾患を理由に断ることをしない、と決めています。それがシンプルに地域に喜んでいただけていると感じているからです。
もちろんできること/できないことはありますが、ベストを尽くす姿勢は今後も変わりません。

次に1つ目の柱である緩和ケア。
昨年『在宅緩和ケアセンター』を開設しました。

緩和医療学会認定施設として、緩和ケア認定医の田代先生を中心とした専門チームで対応しています。
またITを活用した遠隔カンファレンスを行い、院内職員や他事業所との多職種連携の形を作るべく試行錯誤をしています。

2つ目の柱はリハビリテーション。
今月よりリハビリテーション医学会専門医・指導医の高橋先生と言語聴覚士の小杉さんが入職しまして、『在宅リハビリテーションセンター』を開設しました。

ーーーーまだ1ヶ月弱ですが、在宅リハビリテーションセンターの振り返りをお願いします!

伊谷野:
高橋先生は患者様やご家族、院内院外の関係者とわかりやすく積極的にコミュニケーションをとっている印象です。
リハビリマネジメント会議では、総合診療科としての視点を持ちながらもご自宅のことや患者様の動作のことも専門的にみていきながら具体的な説明に至っています。
説明もわかりやすいので、患者様はもちろん、スタッフや関係者も安心できているのはないかと思います。

また、患者様の生活環境を起点に総合診療×リハビリテーション×栄養のお話ができるということが在宅リハビリテーションセンターの強みになっていくのではないでしょうか。

そして3つ目の柱は、精神・認知症
これからですが、2020年4月に精神保健指定医の常勤医師が入職予定です。
地域包括支援センター・在宅介護支援センターや居宅介護支援事業所の職員さんからも相談の多い領域になっていましたので、これからも注力して取り組んでいければと思います。

4つ目の柱は、救急
救急も今まで力を入れてきています。これからも医師・救急救命士を含めてスタッフを増員させていきながら持続可能な組織体制を構築中です。

ーーーーありがとうございます。そろそろお時間がきてしまいました。その他、これからの方向性についてメッセージがあればお願いします。

伊谷野:
成長できる連携に取り組んでいきたいという地域関係者へのお願いですね。

当法人を在宅医療の総合病院として考えていただいて、様々な診療科、職種をうまく活用し、連携していただければと思います。

当院も同じですが1人や1事業所では対応できないことはありますので、一緒に患者様に安心していただくためにどうすれば良いか?を考え、対応していきたいです。


2019.12.26

【理事長インタビュー】~2019年を振り返る~

こんにちは、事務局長の清水です。
師走を言い訳にインタビューブログを前回(先月掲載の第1回)で終了させてしまうところでしたが、年末ギリギリのタイミングでお話ができました。

それでは、伊谷野先生よろしくお願いいたします。

▼伊谷野先生のインタビューはこちらから
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ーーーークリスマスが終わったタイミングですので、2019年を振り返りたいと思いますがよろしいでしょうか?

伊谷野:
色々あったので忘れちゃってますよね。笑

ーーーーGoogleカレンダーを見ながら、まずは上半期から振り返りましょう。(*当院は主にGoogleカレンダーでスケジュール管理をしています)

伊谷野:
改めて振り返ると例年に比べて人材育成について考える機会が多かったですね。

ーーーーと、言いますと?

伊谷野:
多職種で良い人材が続々と入職しています。
在宅医療は院内外含めた意味での『多職種のチーム力』が地域の安心につながると確信しているので、個々の力が発揮できる仕組みづくりは中長期的に取り組む内容ですよね。

ーーーー医師で言うと、上半期は西原先生の職場復帰と浅井先生の入職がありましたね。

伊谷野:
そうですね。医師以外の職種でも、産休育休取得者や子育て中の職員が増えてきましたので、時短勤務やフォロー可能な複数名体制のオペレーションを活用しはじめましたね。
働きやすい環境は今後も職員の意見も取り入れていきながら模索していければと思います。

また、浅井先生は若手のうちから在宅医療に携わりたいということで常勤医師として入職しました。
近年では若手の先生からそのように言っていただけるケースが増えてきたので個人的にも嬉しいです。

浅井先生の患者さんやご家族の声に耳を傾ける姿勢からも伝わる真摯な対応は、安心を感じていただけているのではないかと思います。
これからも良いところは活かしていきながら在宅医療ならではのキャリア形成を続けてほしいですね。
院内に目を向けても、浅井先生の入職で職場が活気づいたと感じますので院内外に好影響を与えていると思います。

ーーーー当院でも日本在宅医学会 認定施設としての研修プログラムがスタートしました。

伊谷野:
教える立場としても、知識や技術の棚卸しをする良い機会になりました。
在宅医療に興味のある先生から「胃ろうや腎ろうの交換に不安がありますが、大丈夫でしょうか?」「経鼻胃管チューブの対応に不安がありますが、大丈夫でしょうか?」といった手技に関わる質問が多いのでこの場で回答します。それらは意欲があれば問題ありません。
専門の違う様々な診療科の先生から学べますし、不安な領域があれば同行しながら覚えることができる職場環境です。

ーーーー話は変わって2019年6月でファミリークリニック品川が開設1周年を迎えました。

伊谷野:
そうですね。三原先生がファミリークリニック品川の院長に就任して、三原先生を中心に法人の基本方針である『断らない在宅医療』を実践していただいています。
地域の特性もありますが、想定したよりも医療依存度が高い患者さんの割合が多いですよね。
加えていわゆる困難事例も多いですが、三原先生チームの日頃の迅速な対応に感謝ですね。

実際ひとつひとつの事例に向き合っていく中で、先日ケアマネジャーさんより「新規対応や緊急往診時の迅速さが頼りになります」とフィードバックをいただきました。
本当に有り難いし、励みになる言葉ですよね。

ーーーー嬉しいですね(^^) 下半期のトピックスは田代先生の入職と在宅緩和ケアセンターの開設でしょうか?

伊谷野:
下半期もかなり大きな変化がありましたね。
日本緩和医療学会認定医の田代先生の入職により、当法人が日本緩和医療学会 認定研修施設になりました。

もともと当法人が断らないという姿勢で日々の診療を行っていると緩和ケアの領域を求められることが多かったので、田代先生の入職により、地域に求められている領域にさらなる厚みをもたせることができました。

そして、日本緩和医療学会 研修施設の認定とともに地域に『在宅緩和ケアセンター』開設をお知らせすることにしました。
さきほどお話したような若手の先生や緩和ケアに興味のある多職種人材の育成の場という観点からも非常に頼りにしています。

ーーーーいまさらの質問ですけど、そもそもなぜ緩和ケアの領域は難しいと言われているのでしょうか?

伊谷野:
100人いれば100通りの調整が必要という点ではないかと思います。

緩和ケアの領域は科学的に手順通り対応していくわけではなく、患者さんに穏やかに安心して生活していただくために、様々な背景を考慮していきながら行う薬の調整や他サービスとの連携を考え調整していくオーダーメイドの対応になります。これは人材育成を含めて、言葉以上に難しいですね。
私自身も当然すべてを1人で対応できるわけではないので、院内外のチーム力が求められます。

ただ、難しい領域だからこそ、当院で掲げた『成長のできる連携』をテーマに関わる人が安心できる地域社会づくりに力を入れていきます。
下期からは、顔の見える連携をもう一歩踏み込んで『成長のできる連携』を目指して、近隣の病院や訪問看護ステーション、居宅介護事業所などと合同カンファレンスや勉強会を積極的に行っています。
日頃の振り返りとしても良い効果が出ていると思いますので、継続していければと思います。

ーーーーありがとうございます。そろそろお時間がきてしまいました。来年初回のインタビューは2020年の方針のお話でよろしいでしょうか?

伊谷野:
そうですね。年末年始に改めて考えてみます。笑

2019.11.21

【理事長インタビュー】私の医師キャリアのスタート~ファミクリ開業までの話

こんにちは、事務局長の清水です。

今回を理事長ブログの記念すべき第1回として、医療法人社団 双愛会 理事長の伊谷野先生にインタビュー形式でブログ記事を作成していければと思います。

長続きさせていきたい企画なので、ランチなどで不定期にゆる~く始めさせてください。笑

それでは、伊谷野先生よろしくお願いいたします。

▼伊谷野先生のインタビューはこちらから
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ーーーー伊谷野先生、まずは医師になった最初のキャリアから教えてください

伊谷野:
懐かしいですね。笑
1998年に昭和大学医学部卒業後、昭和大学医学部第一外科学胸部心臓血管外科に所属したところからキャリアがスタートしました。

正直、ジェネラリストになるのかーーー、はたまたスペシャリストなのかーーー、非常に迷いましたが、体力のあるうちにとことん急性期医療に携わろうと考えて、外科の道を歩むことを決断しました。

ーーーー心臓血管外科はかなりハードと聞きますよね。実際はどうだったのでしょうか?

伊谷野:
はい、かなりハードでしたね。。正直、家庭を犠牲にして没頭していました。
それでもハードな分、仕事を重ねれば重ねるほど技術が上がります。
自分の成長を実感することができ、緊張感がありながらも毎日が充実していたとも言えますよ。

ただ一方で、一般外科を研鑽し、次は胸部外科を、次は心臓血管外科を、、と専門を追求していけばいくほど、年月が経過すればするほどに、次第に扱う領域が狭く絞り込まれていく。
技術を磨けば磨くほど、専門性が深堀りされていくことになります。

それは該当する病気の患者さんのためには力を発揮することができますが、自分の専門以外の病気にはどんどん関われなくなっていくことにもつながります。
「多くの人の役に立ちたいと思って医療の世界に入ったのに…」というジレンマもよぎるようになってきて、当初の考えからギャップが大きくなっていくことも感じていたんですよね。

このままスペシャリストの道を究めて突き抜けていくのか、それとも一般的な診療もこなすジェネラリストへと方向転換するのかーーー。
改めて考えた末、ジェネラリストの道を捨てきれずにメスを置くことを決断しました。

ーーーー30代前半~半ばにかけての決断ですよね?そして当時はまだまだ歴史の浅い在宅医療。結構思い切りましたよね?

伊谷野:
まー、やってみないとわかりませんからね。
2000年に介護保険制度が始まったのをきっかけに、在宅医療が注目されるようになりました。
とはいえ、それをやるクリニックは、私が開業した2005年当時、極端に少なかったです。

なぜなら、在宅医療に携わるには、基本的には病院と同じ体制、つまり365日24時間対応する必要があり、そう簡単には個人創業できないからです。

ただ、流れとしては在宅医療に向かっていくことが国の方針としても示されていました。
一般外来クリニックを始めても、結局は何らかの専門に特化しないと地域に選ばれないかもしれないーーー。
それなら、総合的医療に携わることのできる在宅医療でいこうと思ったのです。

24時間体制については、「今までの外科時代でハードな勤務を積み重ねてきたし、緊急対応も頻繁に行っていたので、自分一人でもなんとかなるかな」と、つまり今までの経験と気合いでなんとかしようとスタートを切りました。

ーーーー開業スタートはどんな感じでしたか?例えば病院勤務医時代との違いはいかがですか?

伊谷野:
在宅医療を始めて、気づいたことがありました。
それは、在宅医療には、救命救急や外科で患者さまが劇的に良くなることと引けをとらない『やりがい』があるということです。

在宅医療は、自分のした努力に対して患者さまやご家族様からの反応がダイレクトに返ってきます。
病院の外科医時代と比較して感謝の気持ちが伝わってくる数と温度感が桁違いだと感じたんです。

これは医師として、素直に嬉しいことですし、日々の診療の励みになりました。

患者さまやご家族様との距離が断然近いという点は、やはり実際にやってみないとわからないものでしたね。

ーーーーなるほど。良い話ですね~。今回はここまでにして、また色々とテーマを考えますのでインタビューさせてください。

伊谷野:
ありがとうございました。
私も話したいテーマを考えておきます。

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