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2020.08.06

対談ブログ~認知症と在宅医療 医師 坂戸 × 理事長 伊谷野~

こんにちは、事務局長の清水です。
本日は当法人の在宅認知症センター長の坂戸先生、理事長の伊谷野先生と対談形式で進めさせていただきます。

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認知症。これからも続く地域課題

ーーーー坂戸先生、まずは簡単に今までどんなキャリアを歩まれていたのか教えてください

坂戸:
私は生まれも育ちも新潟市です。新潟大学卒業後精神科入局し、精神科全般、認知行動療法、思春期発達精神医学の領域で研鑽を積んできました。

児童相談所や県福祉課で女性相談所に在籍し、知的障害と身体障害の両方の相談携わる役割として県の福祉全般を担う業務に携わったこともあります。

それから柏崎市にある新潟病院で神経内科医とともに認知症患者診察を行っていました。リハビリテーションも盛んに行われていた病院です。

伊谷野:
在宅診療で認知症高齢者の数が多く、地域としても大きな課題のひとつです。

坂戸:
実際、新潟病院時代でも、認知症の方が非常に多くいらっしゃいましたね。

伊谷野:
物忘れだけじゃなく周辺症状もあり、そのご家族がすごく疲弊している。今回、在宅認知症センターを設立するに至った経緯はそこにあります。

認知症に関連して大きな問題を抱えている人が多い、その課題解決していくことがファミリークリニックの使命であると考えています。

認知症患者さんご本人を診療の中心と考える

ーーーー坂戸先生は認知症の方を見る上で普段から気をつけてる事はありますか?

坂戸:
はい。
なにより患者さんご本人を診療の中心と考えています。

そこから患者さんやご家族との距離感を考えていますね。距離感を見ながらその関係性を構築します。ご本人からお話を伺うこともありますし、ご苦労なさっているご家族の話を伺うほうを優先することもあります。患者さんごとのケースに合わせて対応をしています。

伊谷野:
坂戸先生はあくまでも患者さんを第一に考えて診療するように心がけているのですね。

私の話をさせていただくとやはり前提は患者さんが第一と考えています。ただ認知症に関してはちょっと例外とせざるをえない場合も結構あります。その患者さん本人ではなく実はご家族のケアがメインであったりする事も多いですよね。また場合によっては担当するケアマネジャーさんが課題をよく認識していてご相談を受ける事も多くあります。

認知症はその周辺症状等をゼロにする事は出来ず、その症状緩和が中心となります。その緩和の対象は本人よりむしろご家族であったり周りの人たちです。その周辺の人々が感じている困りごとを一つ一つ緩和していくのが認知症治療の基本的な考えになると考えています。

坂戸:
ご家族や周りの方々を一緒に診ていくのはおっしゃるようにとても大切なことと思います。ただその場合でも、ご本人の持つ価値観を重視しながら、考え方だったり人生観は大事にはしたいですね。

患者さんのことを知らないと対応することはできません。患者さんご本人を知らないことには、本当の意味でのご家族の困りごとも解消できないことが多いです。患者さんをリスペクトしながら、患者さんの好きなことや大切なことを知り、ご家族の真のお困りごとに向き合っていければと思っています。

伊谷野:
敬意をもって診療を行う。私も開業時から考えていて、ファミクリとしても大切にしている行動規範のひとつです。先生がこれまでご経験なさった患者さんの中で、印象深い患者さんのエピソードはありますか?

坂戸:
ある大学教授だった男性の認知症患者さんですね。

奥様がうつ状態だっていうことで奥様にもカウンセリングを行っていました。認知症の進行に伴い中核症状である記憶障害が進行するのですが、ご家族はなかなか受け入れられず感情的になってしまう。

普段はすごくダンディな方で非常に身なりもきちんとしていてお洒落なご主人でした。
奥様としてはデイサービスに行ってほしいんだけれどもご主人は「そんなに俺が邪魔なのか!」と怒ってしまい拒否していた。

伊谷野:
男性にそのタイプの方多いですね。「お歌うたってお絵描きするなんて子ども扱いするな~!」っておっしゃっている男性の患者さん多いです。特に元医師だったりとか(笑)。

社会的地位の高かった男性だとプライドもあるので、何よりも「尊厳」を大事にするのかと思われますね。

坂戸:
そうなんです。人それぞれ価値観が違うんです。

怒りっぽくて攻撃的になっている患者さんによくよく話を聞くとボケ老人扱いされた、とおっしゃっている方がいらっしゃいます。「おじいちゃん認知症だからね」って言われ、片付けられてしまっていることが怒りの原因だったんです。

対応する人間がよく話を聞かずに「また何か言ってるよ」とか「また何か始まっちゃったよ」などと言って「どうせボケてるからね」という先入観でよく話を聞いてくれないということが症状を悪化させていることがよくあります。

伊谷野:
やっぱり坂戸先生のおっしゃる通り、その人の人生観とか職歴や生活歴を基にしてその方にとって何が大事なのかということを見極めていく事がとても大事ということですね。

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対談ブログは以上になります。

認知症に関するご相談は当法人の在宅認知症センターにご相談ください。
よろしくお願いいたします。

医療法人社団 双愛会
事務局長 清水 雄司
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