対談ブログ~認知症と在宅医療 医師 坂戸 × 理事長 伊谷野~
こんにちは、事務局長の清水です。
本日は当法人の在宅認知症センター長の坂戸先生、理事長の伊谷野先生と対談形式で進めさせていただきます。
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認知症。これからも続く地域課題
ーーーー坂戸先生、まずは簡単に今までどんなキャリアを歩まれていたのか教えてください
坂戸:
私は生まれも育ちも新潟市です。新潟大学卒業後精神科入局し、精神科全般、認知行動療法、思春期発達精神医学の領域で研鑽を積んできました。
児童相談所や県福祉課で女性相談所に在籍し、知的障害と身体障害の両方の相談携わる役割として県の福祉全般を担う業務に携わったこともあります。
それから柏崎市にある新潟病院で神経内科医とともに認知症患者診察を行っていました。リハビリテーションも盛んに行われていた病院です。
伊谷野:
在宅診療で認知症高齢者の数が多く、地域としても大きな課題のひとつです。
坂戸:
実際、新潟病院時代でも、認知症の方が非常に多くいらっしゃいましたね。
伊谷野:
物忘れだけじゃなく周辺症状もあり、そのご家族がすごく疲弊している。今回、在宅認知症センターを設立するに至った経緯はそこにあります。
認知症に関連して大きな問題を抱えている人が多い、その課題解決していくことがファミリークリニックの使命であると考えています。
認知症患者さんご本人を診療の中心と考える
ーーーー坂戸先生は認知症の方を見る上で普段から気をつけてる事はありますか?
坂戸:
はい。
なにより患者さんご本人を診療の中心と考えています。
そこから患者さんやご家族との距離感を考えていますね。距離感を見ながらその関係性を構築します。ご本人からお話を伺うこともありますし、ご苦労なさっているご家族の話を伺うほうを優先することもあります。患者さんごとのケースに合わせて対応をしています。
伊谷野:
坂戸先生はあくまでも患者さんを第一に考えて診療するように心がけているのですね。
私の話をさせていただくとやはり前提は患者さんが第一と考えています。ただ認知症に関してはちょっと例外とせざるをえない場合も結構あります。その患者さん本人ではなく実はご家族のケアがメインであったりする事も多いですよね。また場合によっては担当するケアマネジャーさんが課題をよく認識していてご相談を受ける事も多くあります。
認知症はその周辺症状等をゼロにする事は出来ず、その症状緩和が中心となります。その緩和の対象は本人よりむしろご家族であったり周りの人たちです。その周辺の人々が感じている困りごとを一つ一つ緩和していくのが認知症治療の基本的な考えになると考えています。
坂戸:
ご家族や周りの方々を一緒に診ていくのはおっしゃるようにとても大切なことと思います。ただその場合でも、ご本人の持つ価値観を重視しながら、考え方だったり人生観は大事にはしたいですね。
患者さんのことを知らないと対応することはできません。患者さんご本人を知らないことには、本当の意味でのご家族の困りごとも解消できないことが多いです。患者さんをリスペクトしながら、患者さんの好きなことや大切なことを知り、ご家族の真のお困りごとに向き合っていければと思っています。
伊谷野:
敬意をもって診療を行う。私も開業時から考えていて、ファミクリとしても大切にしている行動規範のひとつです。先生がこれまでご経験なさった患者さんの中で、印象深い患者さんのエピソードはありますか?
坂戸:
ある大学教授だった男性の認知症患者さんですね。
奥様がうつ状態だっていうことで奥様にもカウンセリングを行っていました。認知症の進行に伴い中核症状である記憶障害が進行するのですが、ご家族はなかなか受け入れられず感情的になってしまう。
普段はすごくダンディな方で非常に身なりもきちんとしていてお洒落なご主人でした。
奥様としてはデイサービスに行ってほしいんだけれどもご主人は「そんなに俺が邪魔なのか!」と怒ってしまい拒否していた。
伊谷野:
男性にそのタイプの方多いですね。「お歌うたってお絵描きするなんて子ども扱いするな~!」っておっしゃっている男性の患者さん多いです。特に元医師だったりとか(笑)。
社会的地位の高かった男性だとプライドもあるので、何よりも「尊厳」を大事にするのかと思われますね。
坂戸:
そうなんです。人それぞれ価値観が違うんです。
怒りっぽくて攻撃的になっている患者さんによくよく話を聞くとボケ老人扱いされた、とおっしゃっている方がいらっしゃいます。「おじいちゃん認知症だからね」って言われ、片付けられてしまっていることが怒りの原因だったんです。
対応する人間がよく話を聞かずに「また何か言ってるよ」とか「また何か始まっちゃったよ」などと言って「どうせボケてるからね」という先入観でよく話を聞いてくれないということが症状を悪化させていることがよくあります。
伊谷野:
やっぱり坂戸先生のおっしゃる通り、その人の人生観とか職歴や生活歴を基にしてその方にとって何が大事なのかということを見極めていく事がとても大事ということですね。
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対談ブログは以上になります。
認知症に関するご相談は当法人の在宅認知症センターにご相談ください。
よろしくお願いいたします。
医療法人社団 双愛会
事務局長 清水 雄司
嚥下障害 医師によるリハビリ診療
こんにちは。言語聴覚士の小杉です。
いよいよ夏本番となりました。
熱中症や脱水を予防していく時期ですが、嚥下障害の方は元々の栄養摂取量が少ない傾向にあるため、さらに注意が必要となってきます。ここで問題です。
嚥下障害がある方で、食べにくいのはどちらでしょうか。
答えは・・・
正解は①の果肉入りゼリーになります。
理由としては、食感の異なるものが入っていることにより、喉へ流れるタイミングのズレが生じやすく、むせこみや誤嚥になりやすいためです。嚥下障害の程度により、食べにくいもの、食べやすいものが変わります。歯の問題、喉の問題、飲み込むタイミングの問題、物性の問題など様々な要素が加わってきます。
さて、今回は嚥下機能に不安のある方への医師によるリハビリ診療についてのご案内です。
誤嚥性肺炎を繰り返されている方や、少しむせやすくなった、又は食事がつかえるようになった方、退院後に食形態が下がっている方からの依頼などでリハビリ診療に伺っています。
診療には、リハビリ専門医、言語聴覚士でご自宅に伺います。
リハビリ診療では、体調の確認を行い、日常生活の状況の聞き取り、実際の動作確認を行っていきます。
◯普段の姿勢はどうしているか
◯起き上がり動作はどのようにしているのか
◯口の中の状況、口や舌、喉の動きの確認
◯服薬・食事状況の確認や嚥下機能の評価をご本人やご家族様に確認しています。
そしてすぐに行える姿勢調整についてや、対応方法をお伝えしています。
診療時、医師の視点・セラピストの視点からの評価が入ることにより、姿勢の耐久性の問題になるのか、廃用性の筋力低下があるのか、又は脳梗塞などの新規病変が潜んでいるのかを確認しています。
そして必要時、医師は咳や痰が出やすくなる薬や肺炎予防の薬の処方や、覚醒が下がりやすい服薬量の調整等も行っています。そして薬の飲み方の工夫などもお伝えしています。
*他院の訪問診療を受けていらっしゃる方でも、単発で診療が可能です
ご判断に迷う方、経過を追って評価を希望する方など、まずはリハビリ専門医による嚥下診療にご相談ください。誤嚥性肺炎予防の一つとして、お考えいただけますと幸いです。
医療法人社団 双愛会
在宅リハビリテーションセンター
小杉
新型コロナウイルス感染症と共生する在宅認知症ケア
こんにちは、在宅認知症センター長の坂戸 美和子です。
本日は『新型コロナウイルス感染症と共生する在宅認知症ケア』をテーマに記載します。
身体の「密」を避けながら、互いの心の「密」を保つ
身体の「密」を避ける。これは、これまでも身近なところでは例えばインフルエンザの罹患時など、短期であればなかったわけではありません。しかし、今回は、全ての人が三密を長期的に回避して行くことが求められています。身体の「密」は、心の「密」と密接な繋がりがありますが、三密が求められている今、私たちには、身体は「密」にならず、心のみが「密」になるという難題が与えられていると言えます。
身体の「密」を避けながら、心の「密」を作りだすことの矛盾と難しさ
人間は、物理的な距離が遠ざかれば、心の距離も遠くなりがちです。心が遠くなれば、心細くなったり、イライラも増えていきます。普通ならば「新型コロナの流行が収束するまで仕方がない」と自分に言い聞かせることができますが、短期記憶の低下が顕著な認知症の方は理解できない場合も多く、これまでの日常が変わってしまったことからストレスがたまり、行動として、大声を出す、どなる、せわしなく歩き回るなどの不穏行動、⚪︎⚪︎がしたい、⚪︎⚪︎(お子さんやお孫さんなど)に会いたいと言いはるなどこれまで見られなかった行動を取ってしまうこともあります。実は私たちもそうしたいと思っているけれどできないことを、強く求めるようになることもありますが、それらは全て、心の「密」を求めて起きていることなのです。
身体の「密」を避けながら、心の「密」を作りだす方法
☆心の距離を近くするために
近しい人から手紙を書いてもらって一緒にみる(文字の理解が難しくなっている時は絵などでも良い)。
☆気分を軽くするために
家の周りの散歩などの軽い運動を一緒にしてみる。
☆昔の記憶に働きかける
認知症の方は、慣れ親しんだことや昔の記憶は鮮明です。昔一緒に撮ったホームビデオや写真を一緒に見てみたり、若い頃流行っていた歌を一緒に聞いてみる。
これらはごく一部の例です。患者さんの数だけ、また、家族の数だけ、方法がそれぞれにあるでしょう。それらを見つけて行くことを、「家族の発見」として楽しむことができたら素晴らしいですね。
医療法人社団 双愛会
在宅認知症センター
センター長
坂戸美和子
認知症の心理・行動 医師ブログ~BPSD(認知症の心理・行動的問題)について~
皆さま、はじめまして。
在宅認知症センター長の坂戸 美和子です。
令和2年4月1日、在宅認知症センターが開設されました。「在宅」で認知症を見るって「わっ、大変!」っていうイメージでしょうか?それとも「家族が認知症になったらどうしよう?」「自分も認知症になったらどうしよう?」でしょうか?
認知症は、脳の衰えの病です。認知症の症状は、多岐にわたりますが、私達のところに寄せられる相談は、ほとんどがBPSD(認知症の心理・行動的問題)と呼ばれる症状です。これは認知症の二次障害と呼ばれるもので、二次障害は、一次障害をベースとして引き起こされるものです。
では、認知症の基本症状は何でしょう?それは『記憶障害・見当識障害(日時場所がわからなくなる状態)・理解判断力の障害』です。
自分がどこにいるのか、今という時間はいつなのか、自分の目の前にいる人は誰なのか、今さっき起きたことを丸ごと忘れてしまいます。そしてそれにより、それまではごく普通にできていたことができなくなっていきます。ごく普通にできていたこと、それは料理・洗濯・掃除・日々のお買物など生活全般に及んでいきます。それらの一次障害は中核症状と呼ばれますが、二次障害として起きるBPSD((認知症の心理・行動的問題)とは異なるもので、進行を止めることはできません(一部は薬物療法により進行を遅らせることができる場合もあります)。
一方、BPSD(認知症の心理・行動的問題)は、中核症状に環境要因・心理要因が重なって引き起こされるものです。環境要因には、その人のそれまでの人生の歩み、家族との関係性、過去の重要な出来事、仕事など様々なものが含まれ、それは心理要因と密接につながります。
このブログでは、認知症の心理・行動を、一精神科医としての視点から、情報として発信してまいりたいと思います。
医療法人社団 双愛会
在宅認知症センター
センター長
坂戸美和子
【WEBオンライン勉強会】『在宅での装具作成 〜障害者手帳、医療保険での作り方〜』2020年7月21日(火) 18:15~19:15
こんにちは、事務局長の清水です。
7月21日18:15~ファミクリ勉強会 WEBオンライン開催をご案内いたします。
Zoomを活用した勉強会になります。
お時間がございましたらぜひご参加ください。
【お申し込み】はこちらをクリック
在宅での装具作成
〜障害者手帳、医療保険での作り方〜
2020年7月21日(火)
18:15 ー 19:15
◆講師:
高橋 洋 医師
在宅リハビリテーションセンター長
日本リハビリテーション医学会専門医・指導医
日本心臓リハビリテーション指導士
◆下記のことにお困りの方におすすめの勉強会です
・装具作成のために何度も通院するのが困難
・在宅でどのように装具作成をすればいいのか知りたい
・古くなった装具を修理、作り直したい、など
*WEBオンライン地域勉強会には事前申し込みが必要です。参加方法は記載のメールアドレスにご連絡いたします
WEBオンラインの進め方に不安がある方は、当院の職員からできる限りのサポートをさせていただきます
ぜひこの機会にご参加ください。なお、WEBシステム(Zoom)の都合上、定員は100名で締め切らせていただきます
*今回のご参加者は、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ケアマネジャー、看護師、医師、在宅医療・介護連携担当者の方に限らせていただきます
【お問い合わせ】
医療法人社団 双愛会 ファミリークリニック ( 蒲田 品川 多摩川 )
事務局長 清水 雄司
電話番号:03-5480-1810
y.shimizu@twinheartmedical.com
🍙必要なエネルギーってどれくらい?🍙
ファミリークリニック 管理栄養士の青山です。
前回は必要な水分の量についてお伝えしましたが、今回は必要なエネルギー量についてのお話です。
1日あたりの必要なエネルギーは、体格や年齢、活動量、疾患などにより一人ひとり異なります。また、必要エネルギーを算出する方法もいくつかあります。今回は成人の場合の簡単な算出方法をご紹介します。
例)身長160cmの方で座っている時間が長い方の場合
標準体重:1.6(m)× 1.6(m)× 22 = 56.3(kg)
身体活動量:軽労作となるため、25〜30
1日の適正エネルギー量:56.3(kg)×25〜30(kcal/kg)
≒ 1400〜1700(kcal)
※標準体重より体重が軽い方の場合は、今の体重を当てはめて計算して
みましょう。
手作りの料理ではエネルギー量の計算は大変ですが、お弁当や外食の場合はエネルギー表示がされているものが増えています。エネルギー表示を見る習慣を付けてみましょう。
最初にお伝えした通り、1日あたりの必要なエネルギーは、体格や年齢、活動量、疾患などにより一人ひとり異なります。
例えばお子様の場合は成長に必要なエネルギーも追加する必要があり、年齢(月齢)や体重によって細かく基準が設けられています。学校給食は成長に必要な栄養を十分に摂ることができるよう考えて作られています。休校や分散登校で大変な時期ですが、給食が食べられる時にはしっかり食べましょう。
また、高齢者の場合は持病を持っている方が多く、体格や食事・活動量の個人差も大きくなります。お一人お一人の適正なエネルギー量については、主治医や管理栄養士にご相談ください。
ファミリークリニック
管理栄養士
青山
対談ブログ~ファミリークリニックのコンセプト『在宅の総合病院』とは何か? 医師 高橋 × 理事長 伊谷野~
こんにちは、事務局長の清水です。
2020年7月1日時点で当院の常勤医師数は、11名になります。
本日は常勤医師数が10名を超えて組織が大きくなってきたこのタイミングで、改めて当院の方針を掘り下げていく機会にしたいと思います。
今回、当法人ファミリークリニック( 蒲田 品川 多摩川 )が掲げている『在宅の総合病院を目指します』というコンセプトについて、理事長の伊谷野先生、在宅リハビリテーションセンター長で医局長でもある高橋先生と対談形式で進めさせていただきます。
患者さんはどんな状態であれば”安心”を感じることができるのか?
ーーーーまずは当法人の目指す『在宅の総合病院』とはどのような状態を指しますか?また合わせて、在宅の総合病院ではない状態だったとしたら何を指しますか?
伊谷野:
たしかに自分たちの考えを言葉にしていくことは大事ですね!
それではまず私から。
大枠として『患者さんの視点』と『医療従事者の視点』のそれぞれの視点から在宅の総合病院を考えるという流れで進めていきます。
まずは『患者さん視点』の在宅の総合病院から考えます。
患者さんはどんな状態であれば”安心”を感じることができるのかーーー私は”患者さんご自身が困ったことをトータルで診てくれている”と感じた時に”安心”に結びついているのではないかと思います。
そうなると、例えば医師や医療機関が「認知症は専門ではないので対応できません。緩和ケアは対応しません。専門外は対応しません。」という状態であれば、掲げている在宅の総合病院というコンセプトとは外れます。
患者さんは「困っている今の状態を何とかしてほしい」ということがご要望になりますので、どんな疾患であっても対応ができる組織、それが在宅の総合病院ではないでしょうか。
高橋:
伊谷野先生のお話は僕も共感しています。
地域医療においても在宅医療においても総合診療は『お薬箱』のようなものだと思っているんです。
『在宅医療はお薬箱』?主治医の役割とは?
ーーーー『在宅医療はお薬箱』?面白いフレーズですね。少し補足をお願いいたします。
高橋:
僕はへき地医療や地域医療をベースにしている大学の出身です。そこからの経験でかかりつけの主治医はお薬箱のようなものだという考えに至りました。
患者さんはいくつかの症状を抱えていることがあります。例えば、お腹が痛い、胸が痛い、目が痛い、皮膚に腫れ物があるといった状況だとします。
この場合、内科、眼科、皮膚科の3つの診療科を受診をすることが一般的ですよね。医療機関側で考えると1人の患者さんに3人の医師がつくことになります。
病院では、各診療科で検査をして、診断をして、処方や処置をします。ただ、在宅医療の領域で言えば、その人の今の状況に合わせて、必要な対応を最低限でも良いからその時、その場ですることもとても大事だと思います。
お薬箱という役割のかかりつけ主治医であれば「今の状態からとりあえず何とか見通しを立たせることができる」という状況を目指したいです。
患者さんの「目が痛い」という投げかけには、診療科に関係なく、最低限やることは目を診て、わからなければ写真を撮って、情報収集をした上で地域の眼科の先生にお願いするという流れでお応えしたいと思っています。
伊谷野:
そうですね。眼科の検査はできないですけど、点眼薬を処方することはできますからね。「専門外でわかりません、知りません」ではなく、まずは患者さんの困っていることに向きあう姿勢が大切ですよね。
高橋:
はい、そうですね。
僕がこういうときの対応は「仲の良い親戚のおっちゃん、おばちゃんからの相談だったらどうするか?」と考えるようにしています。”仲の良い友達”と置き換えても良いです。
専門外のことももちろんありますが、仲の良い親戚のおっちゃん、おばちゃんが病気や症状について相談してきたときに「知りません!」とバッサリと断る対応はしないです。
まずは聴いて、見て、できることは対応するし、できないことは適切な役割へのアクセス方法を助言します。
仲の良い親戚のおっちゃんやおばちゃんからの相談への対応と同じように在宅医療の患者さんに接することを考えていますね。
専門に関わらず「あの先生に聞けば、ファミクリに聞けば、何かしてくれるかもしれない」という”安心”を提供する
ーーーーなるほど!ありがとうございます。
それではもうひとつ話が出ていた『医療従事者視点』の在宅の総合病院の話に移りましょう。
伊谷野:
高橋先生の話を聞きながら、私なりの考えをまとめていました。
改めて言えることは、従来の総合病院の考えを何でもかんでも在宅医療に反映するわけではないということですね。
総合病院は各診療科や専門領域がハッキリしています。それは高度な医療を提供する上では必要なことです。
一方で、あえてデメリットを考えるとすると診療科が縦割り過ぎてしまい、それが際立ってしまうと診療科同士の横のつながりが希薄になってしまうことがあるかもしれません。そうなると1人の患者さんに何人もの医師が対応することになるわけです。
当法人の掲げる『在宅の総合病院』は、専門を追求すること自体は良いことですが、その専門を突き抜け、その専門しかやらない、専門外のことはすぐ他に回すという意味ではありません。
ご自宅で療養生活を送りたいという患者さんは、最高の設備が整っている病院での最高の医療を求めているというわけではなく、苦しい状況を良くしてほしいと求めています。
「病気や健康上の問題に対して一か所で全て対応してくれて解決できる」ことが”安心”につながると思っているので、それに応える医師は『1人で総合病院の状態を作るという姿勢』が大事です。要はまずは何でも診る、患者さんに向き合い、自分でできることを考えるということです。
ーーーー1人で総合病院の状態を作るって、、結構難易度が高いように感じてしまったのですが、可能なのでしょうか?
伊谷野:
1人で総合病院の状態を作るという『姿勢』ですね。実際、1人医師で365日24時間なんでも対応するということだとすぐに限界がきます。
私は2005年の開業時にその状態でしたが、体の負担が半端ではないです。長くは続かないですね。長くは続かないということは、結局のところ地域に迷惑をかけてしまうことにもつながりかねません。そこに気づけた時に、私はチームで対応する方針に切り替えていきました。
高橋:
そうですね。
地方やへき地で言えると思うのですが「あの先生に聞けば、何かしてくれるかもしれない」という地域の総合病院や診療所はあると思います。それは地域の患者さんにとっては安心感がありますよね。
ただ、一方では1人医師の限界というのはありますね。それは良くも悪くも、人数が少ない状態で提供している医療は、その先生の医療水準が地域の医療水準になるという側面があるということです。
もちろん高い医療水準であれば良いのですが、それを持続させるのは非常に難しいことだと思います。
当院は複数の医師がいて診療科も多岐にわたるので、ある意味セカンドオピニオン的な役割も担えていますよね。その点は1人医師では難しく、複数名体制ならではのメリットがあることだと言えます。
伊谷野:
複数名体制になったときに気をつけなければいけないのは、診療体制の縦割り化です。当院では診療体制の縦割り化はなくしていかなければいけない。
高橋先生の「どんな状況においてもこのお薬箱(主治医対応)があればなんとか見通しを立たせることができる」という表現がしっくりきますよね。複数診療科の広い守備範囲が必要になってきます。
高橋:
医師も人間で、人間には当然能力の限界があります。まだ経験できていないこともたくさんあるわけなので、わからないときは情報収集に徹して、他の先生の視点も入れることで解消できることがあります。
その時に次回訪問する別の医師が患者さんに対して「先日、主治医の先生から聞きましたけど、、」と話を続けていくことでスムーズに連携ができてくると思います。
目指すのは『在宅の”層”合病院』?ファミクリはミルフィーユ?
ーーーーありがとうございます。高橋先生、在宅医療はお薬箱というようなフレーズもぜひ考えてください。笑
高橋:
うーん。
僕のイメージだと『在宅の”層”合病院』でしょうか。
医師はスペシャリストの専門職で、キャリア形成上、専門領域追求型の I 型人材と表現されることがあります。私は在宅医療で求められるキャリア形成は、ひとつの専門分野も精通した上で、幅広い領域も浅く広く対応できる T 型人材ではないかと思います。広い知識と視野を持ちながら、自分の得意領域も追求している先生は活躍していますね。
I 型人材の先生が増えていくと、縦には伸びますが、横を見ると所々に穴が出てきてしまいます。得意不得意が目立つ組織になっていくでしょう。一方で T 型人材の先生方が増えていくと、広い領域をカバーしながら何層にも積み上がっていきますので、穴がなくなり、かつ縦にも伸びていくわけです。
断らない在宅医療を掲げている当院としては、このような層の厚みがある”層”合病院の状態がイメージに近いのではないでしょうか?
僕は甘いものが好きなのですが、お菓子で例えるなら、何層にも重ねたミルフィーユでしょうか。笑
伊谷野:
在宅の”層”合病院、ファミクリはミルフィーユ、いいですね~!
地層が重なるように層に厚みができれば隙間もなくなりますからね。
「緩和は得意でも、認知症は診れない」「内科は診れても、婦人科は診れない」「腰痛は診れても、腹痛は診れない」など、1人ではどうしても得意不得意がでてきます。
そこをカバーできるのが在宅の総合病院の目指すところですね。現政策において医師のキャリア形成上、不得意なことやできないことはあるので、それ自体は当然です。
そこから思考停止に陥らず、まずは向き合い、どうすれば良いかを考え、できないことは適宜他の先生に相談し連携ですね。
医師個人にとっても視野や対応の幅が広がる良い機会だと思いますので、必ずプラスになるでしょう。
実際、他の先生のカルテやカンファレンスを通じて、学べることは多いですね。
私自身も内科外科系のアプローチと精神科のアプローチの違いがわかったときは勉強になりました。
高橋:
その通りですね。医師が他の人に聞くことは全然恥ずかしくないと思います。
私は一緒に同行している診療助手(メディカルアシスタント)から助言を得ることもあります。診療助手は患者さん側の視点で見てくれているサポーターとしての役割もあり、とても助かっていますね。
ーーーー当院の診療助手についてですね。他の職種のこともぜひ掘り下げていきたいですね。本日はお時間になってしまったので、次回以降のテーマとしてまた開催させてください。次回以降のテーマも決まったところで、最後に伊谷野先生締めの言葉を!
伊谷野:
そうですね。
当院は患者さんの視点で「病気・健康上の問題に対して一か所で全て対応してくれて解決できる」個人が集まって構成された『在宅の総合病院』を目指しています。ただ、まだまだ模索中です。
時間や医療資源は限りのあるものなので、すべてを完璧にできるわけでもありません。それでも患者さんの困っていることに向き合い、それに対して時間や医療資源が限られた中で、個人個人がその時のベストを尽くすという姿勢は大事にしていきたいと思います。
患者さんや地域の関係者からのフィードバックを改善に活かしていきながら、より良い組織を目指していきます。
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対談ブログは以上になります。
医療従事者の方や地域関係者の方の訪問診療の見学も行っておりますので、訪問診療にご興味のある方はご連絡ください。
医療法人社団 双愛会
事務局長 清水 雄司
y.shimizu@twinheartmedical.com
【再度開催】【WEBオンライン勉強会『認知症患者さんのお困りごと』】2020年6月12日(金) 18:15 ー 19:15
こんにちは、事務局長の清水です。
ファミリークリニック 在宅認知症センターより勉強会開催をご案内いたします。
5月19日に開催したものと同内容のWEBオンライン勉強会を開催いたします。
『認知症患者さんのお困りごと』がテーマです。
講師は当院の在宅認知症センター長の坂戸(精神保健指定医、日本精神神経学会専門医)になります。
◆開催日時:
2020年6月12日(金)
18:15 ー 19:15
◆講師:
坂戸 美和子
医療法人社団 双愛会 ファミリークリニック ( 蒲田 ・ 品川 ・ 多摩川 )
在宅認知症センター長
精神保健指定医
日本精神神経学会専門医・指導医
認知症診療医
産業医、公認心理師
内容
・在宅認知症センター主要スタッフ紹介
・認知症について
・事例提示(3例)
・多職種連携について
・認知症の大田区における疫学と当院の役割
・質疑応答
【講師コメント】
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当日はZoomを使用します。
事例提示というセンシティブな内容にテレビ会議は向かないとずっと思っていたのですが、やってみたら顔を合わせた時と何ら変わらず、むしろ、各参加者の人たちと対等になる感じで良かったです。
認知症の困りごとは、皆さん体験しておられるかと思います。
今回は私が抱えている困難事例をとりあげて、私達が悩んでいる点も含めて一緒にお話しませんか?(チャット機能を介して気軽に質問することも可能です)
短い時間ですが今回は事例検討を中心にせっかくのテレビ会議の利点を目一杯使って、テレビ会議ならではの質の高い検討会・勉強会にできればと思います。
ぜひお気軽に皆様のご参加をお待ちしています。
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*WEBオンライン地域連携会には事前申し込みが必要です。参加方法は登録いただいたメールアドレスにご連絡いたします。
*WEBオンラインの進め方に不安がある方は、当院の職員からできる限りのサポートをさせていただきます。ぜひこの機会にご参加ください。
*今回のご参加者は、ケアマネジャー、看護師、医師、在宅医療・介護連携担当者の方に限らせていただきます。
▼【お申込み】こちらをクリック▼
WEBオンライン 地域連携会申込フォーム
医療法人社団 双愛会
事務局長 清水 雄司
y.shimizu@twinheartmedical.com
電話番号:03-5480-1810
在宅認知症センターについてのご案内
こんにちは、事務局長の清水です。
本日は、当法人の在宅認知症センターについて
【1】在宅認知症センター長のご紹介
【2】在宅認知症センターの特徴
にわけてご案内いたします。
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【1】在宅認知症センター長のご紹介
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在宅認知症センター長
医師 坂戸 美和子 さかど みわこ
精神保健指定医
日本精神神経学会専門医・指導医
認知症診療医
日本医師会認定産業医
公認心理師
認知症は誰もがかかる可能性のある疾患です。
患者さんの症状にはそれぞれ背景があり、ご家族の歴史が垣間見えることもあります。
誰も辛い思いをしない医療を提供していくことを目指します。
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【2】在宅認知症センターの特徴
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特徴①認知症の専門医療相談
ご本人・ご家族のほか、介護事業所などからも認知症に関わるご相談を受け付けています。認知症に対する専門知識を有する医師、精神保健福祉士が対応し、治療や介護についてのご相談に応じます。
特徴②身体合併症への対応
認知症は長期的には様々な身体的問題が出てきます。それらを一つの科で抱えず、院内の他診療科と連携を取ることにより「皆でみる」という視点で在宅の療養生活を支えます。
特徴③地域事業所との連携
地域包括支援センターや介護事務所、保健所などと連携・調整を行います。在宅生活の体制を構築するためには、ご家族を支える仕組みも重要です。家族教室などのネットワークづくりを行います。
特徴④ご家族への支援
認知症の患者さんを抱えられたご家族は、より専門的な心理的支援が役立つことも多くあります。ご家族や介護者が認知症の状態に応じて医学・心理的視点から適切な助言を提供できる専門職を配置しています。
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ご案内は以上です。
厚生労働省のデータより、2025年には認知症の人は約700万人前後になり、65歳以上高齢者に対する割合は、2012年の約7人に1人から約5人に1人に上昇する見込みとなる推計があります。
今後も認知症は誰もが関わる可能性のある身近な疾患と言えます。
認知症に関わるご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
よろしくお願いいたします。
お問い合わせ
ファミリークリニック蒲田
大田区南蒲田2-4-19 ANTビル4F
TEL:03-5480-1810 FAX:03-5480-1823
ファミリークリニック品川
品川区大井1-55-6 牧ビル201号室
TEL:03-6424-4439 FAX:03-6735-4390
ファミリークリニック多摩川
大田区田園調布二丁目1番8号NKビル2階2F号室
TEL:03-6424-4454 FAX:03-4243-2384
2020年6月1日 医療法人社団 双愛会 ファミリークリニック多摩川を新規開院しました
2020年6月1日 医療法人社団 双愛会 ファミリークリニック多摩川を新規開院しました。
蒲田院、品川院に続き3店舗目の在宅医療クリニックとして、主に田園調布・多摩川エリアを中心に在宅医療をご提供いたします。
ファミリークリニック多摩川
院長 小沼 修太 おぬま しゅうた
総合診療科
主に在宅医療の総合診療・緩和ケアの領域で研鑽を積んでまいりました。
また、4つの在宅センターと連携を取り、田園調布・多摩川エリアおよび大田区、品川区、世田谷区・目黒区一部、川崎市一部の地域を支えてまいります。
・在宅緩和ケアセンター
・在宅リハビリテーションセンター
・在宅認知症センター
・在宅救急センター
【診療科目】
内科、外科、緩和ケア内科、リハビリテーション科、精神科、皮膚科、整形外科、循環器内科、糖尿病内科
【所在地・アクセス】
〒145-0071
東京都大田区田園調布二丁目1番8号 NKビル2階
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【電話・FAX】
電話番号:03-6424-4454 ・FAX番号:03-4243-2384
引き続き専門職の層の厚さと地域との多職種連携により、『在宅の総合病院』を目指してまいります。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。
医療法人社団 双愛会
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