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2020.08.07

訪問診療のつれづれ 〜医師からみた訪問診療と外来診療のちがい〜

こんにちは、在宅認知症センター長の坂戸 美和子です。

認知症の患者さんに、病院に来院していただいての診療(外来診療)と、こちらから出向いての診療(訪問診療)は、患者さんやご家族にとってはどのような違いがあるものでしょうか?おそらく大きな違いがあることと思います。そして、こちら診療に出向く側にとっても、実は大きく違います。診療は、医師と患者さんとが出会う場ですが、患者さんのお家に向かう時の気持ちと、外来で患者さんをお迎えする場合とではやはり異なることも多くあります。

1患者さんの自宅は患者さんのホームグラウンド
 ある日、初診の患者さんのお宅を訪問した時のことです。訪問するとまずご家族がおられるリビングに案内されました。最初の出会いは、人間関係においてとても重要です。初対面がうまくいかなければ、その関係はずっと続いてしまうことが多いからです。逆に、初対面の最後に、お互いが笑顔で終えられれば、まずは信頼をいただくことができた、と胸をなでおろします。患者さんにとっての“ホームグラウンド”とも言えるご自宅であるからこそ、患者さんやご家族は、ご自分のお気持ちを素直に表していただける、病院の外来と違う、訪問診療という場の大きなメリットの一つはここにあると言えます。

2患者さんとご家族との関係性が見える
 その患者さんの主たる支えとなってくださる方をキーパーソンと呼びます。私たちを出迎えてくださるご家族も、初めてお会いする時は、私たちと同じように緊張しながらも、これからどんな相手と連れ添って行くのか、期待もしていただきながら待っていただいているのだと思います。どの患者さんもそうですが、認知症の患者さんの場合は特に、ご家族とどのような関係でいらっしゃるのかは、とても大きな意味を持ちます。例えば、BPSD(行動・心理的症状)が出現している場合などは、ご家族がどのように受け止めてくださっているのかはその後の治療に大きく影響してきます。

3患者さんの環境が見える
 患者さんの行動・心理的症状(BPSD)に影響を与えるのは、ご家族とのことばかりではありません。例えば、患者さんがおられる場所が、2階で、患者さんはご家族の様子がわかりづらく、疑心暗鬼になっていることがわかった事例があります。家族の様子がわからないことで、不安になり、それが物事を悪い方向に受け止め、妄想を形成するきっかけとなることもあります。このように、患者さんが住まわれている環境を、担当医が直接知ることができることも訪問診療であるからこそ可能となってくるものです。

在宅認知症センター長
坂戸美和子
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