04-1_美和子先生の部屋

2020.08.24

認知症の家族支援 〜支援は患者さんご本人、ご家族、支援者の協働作業〜

こんにちは。在宅認知症センター長の坂戸美和子です。
今回は認知症患者さんのご家族を支援することについてお話をしたいと思います。

1. 家族は患者さん本人をひたすら支える人?
—いいえ、家族も患者さんに助けてもらうこともあります。

在宅で過ごしておられる患者さんのご家族は、患者さんを支える、一番大切な方々であることは間違いありません。しかし、ご家族は患者さんを一方的に支えるだけとはいえない面も実はあります。認知症の患者さんのBPSD(心理・行動的症状)は、認知症のタイプによる違いもありますが、その患者さんの過去の暮らしや出来事が、記憶の衰えとともに、まるで今起きていることのように思ってしまうことがあります。患者さんのそれまでの体験は、おそらく患者さん自身が一番よく知っておられるでしょう。けれど、それを言葉でうまく伝えることができない状態にあるのが認知症です。うまく伝えられないけれど、BPSD(心理行動的症状)の改善のヒントを患者さんご自身が、お話や行動のどこかで示してくださることがあります。

2. 支援者は、患者さん本人・家族を支える人?
—いいえ、支援者も患者さんとご家族に支えられています。

私たち自身も支援する側とされる一機関ですが、私たちはまた、支援をする一方の側にいるわけではありません。実は支援とは、支援を受ける側との共働関係がなければ決して成り立たないのです。ご家族より、ご家族が困っておられることを具体的にお聞きすること、ご家族自身が今どんな状態でいらっしゃるのかを教えていただくこと、患者さんご自身のこれまでのこと、ご家族との関係についてお話いただくこと、これらは全て、ご家族と一緒に取り組むことなしにはできないことです。こうしたことから得られたことが、BPSD(心理・行動的症状)の改善に確実に繋がっていきます。

3. 支援者と支援を受けられる側との関係は常に協働関係

患者さん・ご家族・支援者は、互いが協働関係にあります。お互いが教え合うと言っても良いかもしれません。認知症の患者さんが示す症状・感情・お話の内容は、全てが大切な情報です。ご家族が感じられるお気持ち、患者さんと接しながら湧いてくる感情、患者さんとのご関係、ご家族が持っておられる患者さんのこれまで、全てが大切な情報です。そして支援者は専門家ですが、情報をいただかなくては何もできません。「認知症の患者さんのケアはこうすればいい」という決まった方法はないからです。もちろん、原則はありますが、個々の患者さん・ご家族からの教えていただく沢山のものがあって、初めて認知症支援は成立するのです。

医療法人社団 双愛会
ファミリークリニック
在宅認知症センター
坂戸 美和子
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2020.08.07

訪問診療のつれづれ 〜医師からみた訪問診療と外来診療のちがい〜

こんにちは、在宅認知症センター長の坂戸 美和子です。

認知症の患者さんに、病院に来院していただいての診療(外来診療)と、こちらから出向いての診療(訪問診療)は、患者さんやご家族にとってはどのような違いがあるものでしょうか?おそらく大きな違いがあることと思います。そして、こちら診療に出向く側にとっても、実は大きく違います。診療は、医師と患者さんとが出会う場ですが、患者さんのお家に向かう時の気持ちと、外来で患者さんをお迎えする場合とではやはり異なることも多くあります。

1患者さんの自宅は患者さんのホームグラウンド
 ある日、初診の患者さんのお宅を訪問した時のことです。訪問するとまずご家族がおられるリビングに案内されました。最初の出会いは、人間関係においてとても重要です。初対面がうまくいかなければ、その関係はずっと続いてしまうことが多いからです。逆に、初対面の最後に、お互いが笑顔で終えられれば、まずは信頼をいただくことができた、と胸をなでおろします。患者さんにとっての“ホームグラウンド”とも言えるご自宅であるからこそ、患者さんやご家族は、ご自分のお気持ちを素直に表していただける、病院の外来と違う、訪問診療という場の大きなメリットの一つはここにあると言えます。

2患者さんとご家族との関係性が見える
 その患者さんの主たる支えとなってくださる方をキーパーソンと呼びます。私たちを出迎えてくださるご家族も、初めてお会いする時は、私たちと同じように緊張しながらも、これからどんな相手と連れ添って行くのか、期待もしていただきながら待っていただいているのだと思います。どの患者さんもそうですが、認知症の患者さんの場合は特に、ご家族とどのような関係でいらっしゃるのかは、とても大きな意味を持ちます。例えば、BPSD(行動・心理的症状)が出現している場合などは、ご家族がどのように受け止めてくださっているのかはその後の治療に大きく影響してきます。

3患者さんの環境が見える
 患者さんの行動・心理的症状(BPSD)に影響を与えるのは、ご家族とのことばかりではありません。例えば、患者さんがおられる場所が、2階で、患者さんはご家族の様子がわかりづらく、疑心暗鬼になっていることがわかった事例があります。家族の様子がわからないことで、不安になり、それが物事を悪い方向に受け止め、妄想を形成するきっかけとなることもあります。このように、患者さんが住まわれている環境を、担当医が直接知ることができることも訪問診療であるからこそ可能となってくるものです。

在宅認知症センター長
坂戸美和子
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2020.07.23

新型コロナウイルス感染症と共生する在宅認知症ケア

こんにちは、在宅認知症センター長の坂戸 美和子です。
本日は『新型コロナウイルス感染症と共生する在宅認知症ケア』をテーマに記載します。

身体の「密」を避けながら、互いの心の「密」を保つ

身体の「密」を避ける。これは、これまでも身近なところでは例えばインフルエンザの罹患時など、短期であればなかったわけではありません。しかし、今回は、全ての人が三密を長期的に回避して行くことが求められています。身体の「密」は、心の「密」と密接な繋がりがありますが、三密が求められている今、私たちには、身体は「密」にならず、心のみが「密」になるという難題が与えられていると言えます。

身体の「密」を避けながら、心の「密」を作りだすことの矛盾と難しさ

人間は、物理的な距離が遠ざかれば、心の距離も遠くなりがちです。心が遠くなれば、心細くなったり、イライラも増えていきます。普通ならば「新型コロナの流行が収束するまで仕方がない」と自分に言い聞かせることができますが、短期記憶の低下が顕著な認知症の方は理解できない場合も多く、これまでの日常が変わってしまったことからストレスがたまり、行動として、大声を出す、どなる、せわしなく歩き回るなどの不穏行動、⚪︎⚪︎がしたい、⚪︎⚪︎(お子さんやお孫さんなど)に会いたいと言いはるなどこれまで見られなかった行動を取ってしまうこともあります。実は私たちもそうしたいと思っているけれどできないことを、強く求めるようになることもありますが、それらは全て、心の「密」を求めて起きていることなのです。

身体の「密」を避けながら、心の「密」を作りだす方法

☆心の距離を近くするために
近しい人から手紙を書いてもらって一緒にみる(文字の理解が難しくなっている時は絵などでも良い)。

☆気分を軽くするために
家の周りの散歩などの軽い運動を一緒にしてみる。

☆昔の記憶に働きかける
認知症の方は、慣れ親しんだことや昔の記憶は鮮明です。昔一緒に撮ったホームビデオや写真を一緒に見てみたり、若い頃流行っていた歌を一緒に聞いてみる。

これらはごく一部の例です。患者さんの数だけ、また、家族の数だけ、方法がそれぞれにあるでしょう。それらを見つけて行くことを、「家族の発見」として楽しむことができたら素晴らしいですね。

医療法人社団 双愛会
在宅認知症センター
センター長
坂戸美和子

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2020.07.22

認知症の心理・行動 医師ブログ~BPSD(認知症の心理・行動的問題)について~

皆さま、はじめまして。
在宅認知症センター長の坂戸 美和子です。

令和2年4月1日、在宅認知症センターが開設されました。「在宅」で認知症を見るって「わっ、大変!」っていうイメージでしょうか?それとも「家族が認知症になったらどうしよう?」「自分も認知症になったらどうしよう?」でしょうか?

認知症は、脳の衰えの病です。認知症の症状は、多岐にわたりますが、私達のところに寄せられる相談は、ほとんどがBPSD(認知症の心理・行動的問題)と呼ばれる症状です。これは認知症の二次障害と呼ばれるもので、二次障害は、一次障害をベースとして引き起こされるものです。

では、認知症の基本症状は何でしょう?それは『記憶障害・見当識障害(日時場所がわからなくなる状態)・理解判断力の障害』です。

自分がどこにいるのか、今という時間はいつなのか、自分の目の前にいる人は誰なのか、今さっき起きたことを丸ごと忘れてしまいます。そしてそれにより、それまではごく普通にできていたことができなくなっていきます。ごく普通にできていたこと、それは料理・洗濯・掃除・日々のお買物など生活全般に及んでいきます。それらの一次障害は中核症状と呼ばれますが、二次障害として起きるBPSD((認知症の心理・行動的問題)とは異なるもので、進行を止めることはできません(一部は薬物療法により進行を遅らせることができる場合もあります)。

一方、BPSD(認知症の心理・行動的問題)は、中核症状に環境要因・心理要因が重なって引き起こされるものです。環境要因には、その人のそれまでの人生の歩み、家族との関係性、過去の重要な出来事、仕事など様々なものが含まれ、それは心理要因と密接につながります。

このブログでは、認知症の心理・行動を、一精神科医としての視点から、情報として発信してまいりたいと思います。

医療法人社団 双愛会
在宅認知症センター
センター長
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